小説「残光」あとがき
この小説はもとよりすべてフィクションであって、登場人物・団体などの名称は架空のものである。
最終回に添付する写真を撮りに、出町の三角州に行った日、前日からの雪がまだ京都には残っていた。雪景色の京都を舞台にするつもりはなくて、とまどっていたのだが、白く浮き上がる大文字の火床を見て、「これでいい」と思った。
雪を踏んで三角州の突端へ行こうとしていると、突然、二人の少女が立ちふさがった。
「○○小学校の生徒ですけど、アンケートに答えてもらえますか?」
校外学習でやってきているらしい二人は、それぞれに名前を名乗った。一人は明らかに外国人の子女でエキゾチックな容貌をイスラム風にスカーフで包んでいる。幾つかの簡単な質問。
「ここには良く来ますか?」「ここに来るとどんな気分になりますか?」etc
そして最後の質問「30年前と比べて、鴨川はきれいですか?」
僕は破願した。「30年前は知らないけど、20年前なら知っている」
そう言ったら不意に、胸が詰まったが、僕は笑って答えた。
「きれいになってるよ、たしかに、きれいになった・・・」
礼を言って少女たちは、三角州から対岸に続く飛び石を元気に跳ねていった。20年前にはなかった飛び石。
20年前には、あまり見ることもなかった組み合わせの少女たち。
そして、あの日、僕と肩を並べてこの川を見ていた親友の一人は、もう、この世にいない。
この小説は、その亡き友に捧げる、ささやかな供物として、書き始めたことを、ここに書き添えておく。
| 固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0)

