2005.02.12

小説「残光」あとがき

sankakusu
この小説はもとよりすべてフィクションであって、登場人物・団体などの名称は架空のものである。

最終回に添付する写真を撮りに、出町の三角州に行った日、前日からの雪がまだ京都には残っていた。雪景色の京都を舞台にするつもりはなくて、とまどっていたのだが、白く浮き上がる大文字の火床を見て、「これでいい」と思った。
雪を踏んで三角州の突端へ行こうとしていると、突然、二人の少女が立ちふさがった。
「○○小学校の生徒ですけど、アンケートに答えてもらえますか?」
校外学習でやってきているらしい二人は、それぞれに名前を名乗った。一人は明らかに外国人の子女でエキゾチックな容貌をイスラム風にスカーフで包んでいる。幾つかの簡単な質問。
「ここには良く来ますか?」「ここに来るとどんな気分になりますか?」etc
そして最後の質問「30年前と比べて、鴨川はきれいですか?」
僕は破願した。「30年前は知らないけど、20年前なら知っている」
そう言ったら不意に、胸が詰まったが、僕は笑って答えた。
「きれいになってるよ、たしかに、きれいになった・・・」

礼を言って少女たちは、三角州から対岸に続く飛び石を元気に跳ねていった。20年前にはなかった飛び石。
20年前には、あまり見ることもなかった組み合わせの少女たち。
そして、あの日、僕と肩を並べてこの川を見ていた親友の一人は、もう、この世にいない。

この小説は、その亡き友に捧げる、ささやかな供物として、書き始めたことを、ここに書き添えておく。

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2005.02.10

小説「残光」最終回

saishukai

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 健二は、彩夏と肩を並べて、流れる川を見つめた。
 やがて、彩夏はポケットに突っ込んでいた手を動かし、握り締めていたものを取り出す。
 茶色の小さなガラス瓶。
 健二も同じように、右手をポケットから出し、緑の小瓶をかざす。
 どちらからともなく頷いた二人は、小さく言葉を交わした。
「どっちの川を選ぶ?」
「じゃ、うちは賀茂川」「それじゃ、おれは、高野川」
 二人は左右に分かれて、彩夏は三角州の西側を流れる賀茂川に、健二は反対の高野川に歩み寄り、少しだけ流れを遡って、しゃがみこんだ。
 緑の小瓶の蓋をひねり、健二は中身を左の掌にあける。白い粒と細かな灰が掌からこぼれ、川面に散る。沈むことなく浮かんで流れていく、詩織とはるかの遺骨。
 茶色のガラス瓶から、さらさらした白い灰を右の掌に受けた彩夏は、そのまま手を水に漬けた。細く白い手から、雲のように水中に広がっていく、駿の遺灰。
 ひたむきに、壜の中身を掌にあけ、全部を流しきった健二は立ち上がり、流れを追った。彩夏もまた、必死の面持ちで雪のように流れていく灰を追いかけた。
 三角州の先端で、二人はからだをぶつけそうになり、とっさに健二はよろめいた彩夏を抱える。彩夏も健二の胴に、しっかりと腕を回しながら、視線は川面から離れない。
「あ・・・混じり合ってく・・・」
 本当に、そう見えたのだろうか・・・彩夏は泣き笑いの顔でそう呟いているが、健二には、上り行く朝日にきらめく水面で、二つの遺灰がどうなったのか、はっきりは見えなかった。けれども、滔々と流れる鴨川の瀬音と、遥かに続く水脈の豊かさを前に、こみ上げる思いがあった。

 やがて、静かに腕を離し、優しい笑顔で別れを告げる彩夏の顔・・・詩織そっくりだと思っていた彼女の顔は、健二の目にもう、そうは見えない。消えない痛みと、いとおしい思い出を刻んで成長した、他の誰でもない一人の女性の顔である。
 健二も大きく手を振り、雪を踏んで歩き出した。賀茂大橋の上を、雪を蹴散らして市バスが走っていく。
(パンを買って帰ろう、美咲と朝食を食べよう)空になった小瓶をポケットの中で転がしながら、健二はそう思った。最後に鴨川の流れに目をやると、ユリカモメの大群が舞い上がって、流れの果てを隠した。
                                                        (完)

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小説・「残光」第八十八回

yukinodaimonji

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 その朝、京都の街はうっすらと雪に覆われていた。
 (約束の日が来た)と、健二は胸の中で呟くと、まどろむ美咲を起こさないように、そっとワークブーツを履いた。
 その場所まで、かなりの距離があるが、歩いていくつもりだった。
 僅かの雪でも道は、まばゆく輝き、清浄な世界が現れたように感じる。つかの間の幻想に過ぎなくても、この朝はそうあってほしかった。
 約束したもう一人も、きっと、歩いて向かっていると、健二は確信していた。

 鴨川のほとりに出て、ひたすらにその左岸を北上する。右手に、白く火床を浮き上がらせた大文字が見えてくると、目的地は目の前にあった。
 今出川通りの賀茂大橋をくぐり、出町柳駅前で川端通に上がると、河合橋を西へ渡る。右手には下鴨神社の糺の森、そして、左に続く公園は、通称出町の三角州。
 高野川と賀茂川が賀茂大橋の直前で合流すると、鴨川となる。その流れをはるか南に望みながら、鋭く尖る三角の突端に、健二は歩いていった。まだ、誰も踏んでいない白い雪・・・しかし、ひとつだけ小さな足跡が続いていて、渚には、孤影がたたずんでいる。
「待ったか?」
健二が声を掛けると、人影は軽く肩をゆすって振り向き、明るく応えた。
「ううん、うちもさっき来たトコや」
コートの衿に埋まった少女の頬は赤く染まり、白い息を弾ませる。彩夏だった。
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☆思いのほか長く連載してきましたが、次回は最終回です。

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2005.02.04

小説・「残光」第八十七回

tadorituku

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  木枯らしの中、健二はコートのポケットに手を突っ込んで家路を急ぐ。やがて見えてきた家の明かりに、健二の顔がほころぶ。
「目立つなあ、タンタの影は」
 町家というには安っぽい造りの長屋の一軒。玄関の脇の小窓に、でかでかと映し出された猫の影が、みぎゃあ、と健二を迎えた。上りがまちにスーパーの買い物袋を置くと、足にまとわりつくオス猫・タンタを抱き上げて、健二は苦笑する。
「おまえもおれも、美咲に拾ってもらった同志だ、しゃんと頑張ろうぜ、愛想つかされないようにな」
部屋の奥から、美咲の声が呼ぶ。
「ねえ、はよ見て、こたつ、出したんよ」
 もうそんな季節になったかと、健二は感慨を覚える。

 駿の葬儀を終えた夜、健二は美咲の家に来た。
 朝まで、美咲を抱きしめていた。
 その日から、美咲の家が健二の住処になった。

 炬燵の上に乗せた携帯コンロで湯豆腐を食べながら、美咲は健二に葉書を差し出した。塩澤真那からの転居通知だった。
「そうか・・・引っ越すのか?」
 駿の遺骨を抱えて東京に戻った真那は、駿と暮らしたマンションを売って、郊外の小さな家を買ったと告げてきた。
「結局、彩夏と真那さん、二人で駿さんをみとらはったねえ・・・喧嘩もせんと、不思議に仲良う・・・」
「不思議、に見えたか?でもな、彩夏は、駿にとっちゃ、娘みたいなもんだったからな」
「そやろか?ほんまのとこは、本人たちにしかわからへんと思うよ」
そういって、少し寂しげに微笑した美咲は、違う話を思い出したらしく表情を改める。
「そういや、彩夏に昼間会うたとき、伝言頼まれてたんや」
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2005.02.03

小説・「残光」第八十六回

gannkeiji_003

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 車窓を流れていく景色を、駿はいとおしんで眺め、懐かしい場所に通りかかると必ず声を上げた。
「あそこの喫茶店、オープンカフェに改装したんだね!よく漫画読んで何時間もだべったんだ・・・」
「あの古本屋は・・・百円パーキングになってしまったのか」
「日仏会館!張り切ってフランス映画見に行ったけど、字幕がついてなくて全然筋がわからなかったよ」
 相槌を打つ竜生の頬に、涙が流れているのを、健二はバックミラーで見つける。
 熟睡している真那の肩を支えてやりながら、健二は精一杯明るく、乱暴に駿に応えた。
「なんだ、京都で暮らしてるのに、出歩きもせずにいたのか?今度、おれが引っ張りまわしてやるよ。うん、へたばるまで、懐かしい店を案内してやる!」
 楠本蝶類研究所の跡地に近づいたとき、駿は、変わらぬ朗らかな声で告げた。
「わるいな、竜生、あそこ行くの、次にとっておきたくなった・・・僕が退院して・・・・そうだよ、景子も真那もちゃんと起きているときに、みんなで、明るい日差しの下で、行きたい」
「そうだな!」「そやな!」
竜生と健二が同時に答え、車は夜の都大路を走りぬけた。

 二週間後、塩澤駿は、入院先の病院で死んだ。

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2005.02.02

小説・「残光」第八十五回

seibo

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 彩夏に肩を抱えられ、車に乗り込むとき、駿は一瞬、建物を振り返った。市街の明かりに照らされ、木立を背に浮かび上がる、幻影の楠本蝶類研究所、青春の碑を。
 竜生は、景子を支えて、助手席に乗せ、ハンドルを握る。シートベルトをすると、景子は幼子のように頭を竜生に寄せて、寝息を立て始めた。健二は、すでに眠りについた真那を抱きかかえて、二列目に乗った。最後尾の席で、駿が深い疲労の表情でシートにもたれている。、その肩に腕を回し、駿の頭を胸に抱く彩夏の顔が、健二の目には聖母のように見える。
 
 疾走する車の中で、語るのは健二と竜生だけだ。
「その子は・・・詩織じゃないんやな」
「ああ・・・駿は詩織の娘だと思った。でも、そうじゃなかった。それでも、駿にはかけがえのない子だ」
「そやけど、こうしてると、六人揃ってるみたいや」
「もう、決して揃うことはないんだ」
「駿は京都で、その子と生きていくんか・・・健二、じゃあ、お前は、真那と」
「いや、そうはならない。おれは、あの夏を終わらせることにしたんだ。おれは、おれの秋や冬を、生きていくよ」
「おれは・・・どないしたらええんかな・・・」
「竜生の人生を全うするしかないさ。その人生に、景子が必要だったら、手を離さずに、つかまえていればいい。でも・・・景子には竜生が必要のように、思えるがな」
 そのとき、駿が身じろぎし、起き上がって言った。
「竜生・・・頼みがある。ちょっとだけ寄り道してくれないか?」
「あかんよ、駿・・・熱があるみたいや」
気づかう彩夏に、駿は拝むように手を挙げ、続けた。
「そんなに回り道にはならないよ・・・竜生の大学の南キャンパスだ・・・楠本蝶類研究所の跡地を、見て行きたいんだよ」
 健二と竜生は息を飲み、頷いた。
「そうだ、あれきり・・・行ってないな、二十年の間、一度も」
「おれかて、そうや・・・」
 寄り添う三組の男女を乗せて、車は鴨川のほとりを下って行った。
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2005.02.01

小説・「残光」第八十四回

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「さあ、今なら・・・詩織に、言葉は届くさ」
 景子は、詩織に近づこうとしてふらつき、床に跪いた。見上げて、声を絞り出す。
「うちは、詩織が好きやった。なのに、あんなひどいことをした・・・ごめん!それが、言いたかったんや・・・ずうっと、言いたかったんや」
 少女が頷くのを見届けると、景子は床に倒れ臥した。
 竜生が景子の側にしゃがみ、やはり少女を見上げて呟く。
「信じて、くれるかな・・・おれも、あの夏と、みんなが、宝物やったんや。あの想い出を守ろう思うて、かえって、こんなメチャクチャをやらかしてもうた・・・。おれ、まちごうてたわ」
 竜生は鍵とジッポーを部屋の隅へ投げ捨てた。ゆっくりとそれに近づいて拾い上げ、ポケットにしまった健二は、緑の小瓶をかざした。
「ありがとう、詩織。お前が、みんなを、助けてくれたんだな・・・」
 そして、立ち尽くす少女に視線を移し、健二は、はっと顔色を変える。
「君が・・・ここへ来たのは!駿の病気が・・・」
 閃くように顔を向けた健二に、駿はさざなみのように微笑して、頷き、少女に言った。
「この前の検査の結果が、届いたんだね」
「うん・・・。GPSで駿の場所探して、ここに」
少女=彩夏は、震える声で言うと、駿に駆け寄り、手を握る。
「大丈夫や、きっと、きっと治る。いこ!今から、入院や」
 健二が彩夏に訊ねる。
「車はあるのか?美咲は?」
彩夏はかぶりを振る。
「タクシー拾って、この近くまで来て捨てたから」
 健二は、竜生に駆け寄り、引きずり起こす。
「竜生、すぐに車を出せ!駿を乗せて、病院にいく!」
戸惑った竜生は、説明を求めて駿を見る。駿は微笑を崩さず、告げた。
「僕は、治癒する可能性の低い病気に掛かっててさ。悪い兆候が出たらしい。でも、負けやしないよ」
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小説・「残光」第八十三回

ikari

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 竜生の背中に飛び掛り、床に薙ぎ倒し、ねじ伏せた健二は、しかし、相手がまるで抵抗しないのに気付いて不審な表情になる。
 倒れた竜生は目を一杯に見開き、恐怖の叫びを発した。
「嘘や・・・詩織が、死んだはずの詩織が、なんでここに!」
 景子が、よろめきながらテーブルを離れ、ドアに向かって歩み寄る。畏怖と同時に、歓喜の表情が景子の顔にあった。
「詩織!・・・会いたかった!うちを・・・許してとは言えへんけど・・・」
 真那が、朦朧とした表情で呟く。
「これは、きっと、夢なんだよね」
 戸口には、ハイティーンの少女が立っていた。長い髪を肩に垂らし、うす青いTシャツとスカートを着て、サンダル履きで、電灯に照らされるその顔は悲しみに満ちている。その唇が震えて、小さな声がつむぎだされる。
「あかんよ・・・だあれも、死んだらあかんよ・・・」
 その言葉に、駿が深く頷いた。倒れている竜生にかがみこみ、抱き起こし、その耳元に駿は呟く。
「もっと早く、僕たちは、会って話をしなくちゃいけなかったな・・・詩織のことも、景子のことも、相談しあえば、こんなことにならなかったんだ・・・でもね、遅すぎることはないんだ。まだ、なんとかなる!生きてさえいれば!」
 だんだんに力強く話し、駿は竜生を立たせた。振り向いて、健二に泣き笑いの顔を向ける。
「健二も、ひとりで突っ走りすぎだったよ。いつも、そうだったけどさ」
 健二は、詩織の面影を持つ少女を見つめながら、深く息をつき、テーブルの上の小瓶を握った。
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2005.01.30

小説・「残光」第八十二回

saigosinpan

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 異様な緊張が走り、健二が竜生に向かって足を踏み出す。竜生が激しく叫んだ。
「健二、動くんやないで!一階にな、仕掛けがしてあるんや。おれが、この部屋の鍵を掛けて、下へ降りたら、ガソリンのポリタンク、蹴倒して、このライターで火を点ける。よう乾燥しとるしな、火の手が回るんは、あっちゅう間や」
 竜生の手には、真鍮の鍵とジッポーが握られていた。景子が静かに言った。
「みんなを眠らせておいて・・・うちも一緒にして、全部焼いてしまうつもりやったん?一人だけ、逃げて・・・」
竜生は汗のしずくにまみれた顔を、横に振る。
「おれらが書き直した遺書を、健二や駿や真那がそのまんま、納得したら、おれもワイン飲んで、みんなで一晩過ごして、そのまんま、明日を迎えるつもりやった・・・けど、あかんかったな。景子・・・お前が、お芝居につきあいきれへんで、ほんまのことを、ばらしてしもうて、わやになってしもたら、全部終りにするつもりやった。そんときは、おれも一緒に火の中に消えよ、おもてた。」
 竜生は言葉を切り、微かに笑った。
「そやけど、それもあかんかったな・・・おれは景子のために全部やってきたのに、景子がほんまに好きやったんは、詩織やったなんて、もう、おれには何にもあらへん。死ぬ理由さえもあらへんわ!ほんま・・・二十年も、なにをあほなことやってきたんやろ!もう、ええわ、なんもかも!」
 竜生の全身が震え、一気に振り向いてドアに走った。健二がダッシュした。蒼白な顔で、駿が何かを叫ぼうとした。竜生の手がドアに掛かり、力いっぱい開く。健二は、間に合いそうもない。
 だがその瞬間、竜生が凍りついた。言葉にならない絶叫が竜生の口から噴き上がり、彼の身体はよろめいて後退し、部屋の中にあとじさってきた。
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2005.01.29

小説・「残光」第八十一回

kaitaigo

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 景子は、竜生の声を無視して、真那の肩を揺さぶる。
「辛かったんは真那かて一緒やろ!みんなが、真那が健二を好きやいう事、わかってた。けど健二は、真那とつきおうてるように見せながら、詩織とくっついてたんやで!そやのに、あのあとも、真那は健二のことずっと好きで、それを無理して忘れようおもうて、駿と結婚したんやんか!」
 竜生が茫然とドアにもたれて、呻いている。
「ほな・・・景子も、詩織のことを忘れようおもうて、おれと婚約、したんか?」
「そうじゃないわ・・・それは、違うよ、景子も、竜生も!」
真那が、力を振り絞って、悲痛に叫ぶ。
「ちごうてへんよ・・・」
真那の髪を撫でながら浮かべた景子の笑いが壮絶で、竜生も健二も金縛りにあったように動けない。
「うちとパパは、竜生を地獄に巻き込んだんや。京都の人間やのに、裏表のない竜生を、利用したんや。いくらうちらが悪党でも、少しは竜生に、ええ目見せたらな、可哀想やん・・・そうおもて、婚約した。けど、うちは、どんどん駄目になっていくばっかで、竜生も怯んだやろ。婚約破棄したんは・・・だから、お慈悲や。それがわかってたから、すぐに竜生も、今の奥さんもろうて、家庭を持って、京都から逃げたんやろ」
 景子の言葉に、竜生がヒステリックに笑い声を上げる。
「あはは・・・景子が言うてる通りや、いう気がする。けど、それが全部やあらへん!なにがほんまもんやったか、もう・・・わからんようになってしもた!もう、どうでもええわ!」
 竜生は仁王立ちになり、狂的に輝くまなざしで、部屋の中の全員を見据えた。
「あの夏の終り、蝶類研究所を、とうとう潰したあの日・・・おれはものすごく、寂しかった。ほんで、みんなを、このうえのう、いとおしく思うた。あの日に、帰りたいと何度思うたか・・・そやし、こうするしかないんや!」
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