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2008.09.29

京都本紹介「京都宵」恐怖と甘美・・・底知れぬ京都の闇

「京都検定」の受験勉強をやった人なら誰でも知っていると思うが、桓武天皇が遷都するにあたり、「やましろ」の地を選んだのは「四神相応之地」だったからとされている。佳き地相として、北に玄武、南に朱雀、東に青龍、西に白虎がある、というのがそれだ。
で、実際に京都盆地でそれに照応するのは、玄武が船岡山、青龍が鴨川、白虎が山陰道・・・、とここまでは、わかる。
だが、朱雀はというと、巨椋池。これがひっかかるのだ。「おぐらいけ」と読むのだが、今の京都地図を眺めたって、それはないのである。
なぜかというとその巨大な湖沼は、昭和16年に干拓されてなくなってしまったのだ。

じゃ、その時から、京都は南の護りを喪ってしまったのじゃないか・・・?

わしはずっとその疑問を抱いてきたのだが、寡聞にして今までそれに言及する他者を知らなかった。
それが、この本
「京都宵」光文社文庫・異形コレクション・井上雅彦監修

に収められた一編、小林泰三作「朱雀の池」でずばり、そのテーマが取り上げられていたのである。
しかもこの小説、もう一つ、京都に関してあまり人が言いたがらない事実・・・「原爆投下の目標であった」という件も重ねて描いていた。
これもまたわしが、かつてblogで取り上げていたもの
であって、このふたつを見事にひとつの恐怖譚にしている作者に深く共感、脱帽したのである。

この「京都宵」は、19編すべてが書き下ろしの新作。
その一つ一つが異なる切り口で京都の怪しさと妖しさを描いていて、鮮烈である。
艶麗で耳に心地よい京都言葉の語り口に、いつの間にかおぞましい異界に引き込まれる恍惚。
さまざまな題材と視点から描かれる恐怖と幻妖の物語は、京都の闇の底知れなさを味わわせてくれて、芳醇である。

あと一編だけ、特異な感想を述べるのだが、それは赤江瀑作「水翁よ」。
編者・井上雅彦が憧れをもって述べるとおり、赤江瀑こそ京都を舞台に豪華絢爛な「魔」の物語を描いてきた巨匠である。
その最新の一編が読める喜びのなか、不意にわしは心底、恐怖に戦いたのである。・・・なんというか、この「水翁よ」中の出来事を、過去に体験したという記憶がよみがえったのだ。
実はほかの作品でも、同じように「あれ?これ、現実に味わったことがあるような・・・」と感じた。フィクションと現実の境を幻惑させるような、そんな雰囲気があるのだ。
まさに魔書・・・

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コメント

ペ・ヨンジュン主演の韓国ドラマ「大王四神記」にも、玄武、朱雀、青龍、白虎が出てきましたよ(^^)
中国から入ってきた哲理なんでしょうねぇ。
奈良に行くのに京滋バイパスを使うのですが、最終が「巨椋」。あの辺りに巨椋の池があったのでございますか~

投稿: れこりん | 2008.09.29 20:04

☆れこりんさん、はい、四神相応の考えは、「風水」というやつで、中国起源ですね。
明日香の高松塚古墳の壁画などにも描かれておりましたな。
で、京滋バイパスの「巨椋」ですが、まさにあの辺一帯の平地は、かつて見渡す限りの沼、湿地帯だったそうです。池などという大きさではありません。平安京よりも面積が広かったらしいです。

投稿: 龍3 | 2008.09.29 23:43

へぇ~そうなんですかぁ!そんなに大きい池が。。。
で、埋め立ててしまって朱雀は大丈夫なのでしょうか?
原爆投下未遂と朱雀の池の秘密知りたいです!
教えて教えて龍3さ~んww

投稿: れこりん | 2008.09.30 18:42

☆れこりんさん、その秘密は・・・
「京都宵」を買って読んでください(笑)
というか、まあ、巨椋池埋め立てと、原爆投下目標になったことに、関係はないです。
けれど、それを結びつけたところに、小説「朱雀の池」がホラーとして優れて、面白いと思ったわけです。

投稿: 龍3 | 2008.10.01 08:24

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