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2006.10.12

京都と「作家」 その4 赤江瀑

Sakon1

作家の中には、既存のジャンルに当てはまらない、その人にしか書けない独自の分野で読者を魅了しているオンリーワンの存在がいる。
京都に関わる作家のうち、赤江瀑(あかえ ばく)がそれに当たると思う。

わしが赤江作品を最初に読んだのは、前にも触れた「京都ミステリー傑作選」(河出文庫・昭和60年初版)というアンソロジーに入っていた、「京の毒・陶の変」という短編である。
ほかには山村美紗、阿刀田高、小林久三、和久峻三といった作家が書いている中、わしには赤江作品が最も濃密に京都の雰囲気を描いていると思われ、最高に魅力的であった。
この作品、ミステリー傑作選に入っていると言うても、トリックも推理もない。清水焼の家に生まれた若き陶芸家が、陶芸の道に苦悩する中で京都の魔的な部分に囚われ、ついに破滅していくのを描いた短編である。
陶芸に関する深い造詣、湿度さえ感じさせる濃密な京都の風物描写、華麗にして艶な文体、衝撃的な展開、もうまったく、「こういう京都の小説を探していたんだ!」と、わしは叫んで、赤江の虜になったのだった。

しかしながら、赤江は余りメジャーな存在とは言いがたい。熱狂的ファンがついているユニークな存在というところだろうか。
この人は、1933年に下関に生まれ、今もそこに住んでいるらしい。
シナリオライターとして活躍したのち、1970年に「ニジンスキーの手」で第15回小説現代新人賞を受賞したのが作家としてのデビューである。
その後、第1回角川小説賞、第12回泉鏡花賞を受賞し、2度にわたって直木賞候補となっている。
刊行された本は80冊以上に及ぶが、京都を舞台にした作品がかなりの比重を占める。京都出身でも在住でもないのが不思議なほどに、京都の真髄を抉り出し、京言葉を縦横に駆使し、まさに「京の毒と魅惑」を味わわせてくれるのだ。
立風書房発行の「京都小説集 その壱 風幻」と「京都小説集 その弐 夢跡」に、京都を舞台にした作品が集められているが、ここに収められた作品の題名を目にするだけでも、なんとなく作風がわかるであろう。

「禽獣の門 花夜叉殺し 虹色の翅の闇 花曝れ首 殺し蜜狂い蜜 獣林寺妖変 雪華葬刺し 夜の藤十郎 罪喰い 阿修羅花伝・・・」

耽美、幻妖、伝奇などと形容されるが、それだけでくくりきれない赤江作品の魅力は、こうした紹介ではなかなか伝えにくい。どうぞ一度読んでみてください。

ただし、現在も創作活動を続けている赤江だが、過去の作品を入手するのはなかなか困難である。「京都小説集」もわしは図書館で借りて読んでいるのだ(涙)。
新作歌舞伎の脚本も書いているほど、古典と伝統芸術に詳しく、絢爛たる文章の書ける赤江。彼のような作品を書きたいと思うわしの願いは、身の程知らずだろうか?だろうなあ(嘆息)。

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