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2006.03.07

岡部伊都子先生の本

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岡部伊都子先生には、その著作を読んで以来、ずっと私淑してきた。
一度もお会いしたことはないが、わしの「京都」と、「モノの考え方」についての師のお一人である。
先生の最新の著作「遺言のつもりで 伊都子一生語り下ろし」という本が、昨日の朝日新聞の書評に載っていたので、今日、四条通のジュンク堂で買ってきた。
先生のプロフィールについて、この本のカバーに書かれているものを下に引用する。

岡部伊都子(おかべ・いつこ)
一九二三年、大阪に生まれる。随筆家。相愛高等女学校を病気のため中途退学した。結婚・離婚を経て、一九五四年から執筆生活。伝統や美術、自然、歴史などにこまやかな視線を注ぎながら、戦争や沖縄、差別、環境などの問題を鋭く追及する。

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わしが京都に来た19歳のとき、この本に出会った。
「観光バスの行かない・・・埋もれた古寺」新潮文庫 1975年初版
気取り屋で、余り人の行かない、京都の穴場を見つけたいと若造の身で思っていたわしは、タイトルに魅せられて買った。京都のお寺は、浄瑠璃寺、高山寺、曼殊院、泉涌寺、永観堂などくらいで、兵庫や奈良、大阪のお寺も多く紹介されていた。
繊細な感性溢れる文章にうたれるとともに、この本の中には、社会に対する鋭く切実な問いかけも含まれていたのに驚いた。曼殊院の黄不動画像に託して、当時日本を沸騰させていた日米安保条約改定への反対闘争に言及し、理不尽なものへの怒りを激しく書いていたのだ。

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以来、わしは岡部先生の著作を探しては読んだ。
これも新潮社の本で、1976年刊の「京の手みやげ」
京千代紙、京ろうそく、京焼、清水人形など、優れた京都の手仕事が紹介されている。寺や神社のことしか頭になかったわしに、京都の職人技、ものづくりに集約した歴史と文化というものへの目を開かせてくれた。

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そして、最新刊「遺言のつもりで 伊都子一生語り下ろし」藤原書店刊
生い立ちから、太平洋戦争のこと、筆一本で生きてきたこと、ハンセン病や沖縄、安保闘争などから社会への目を開いていったことなど、自身で語られた言葉をまとめた本である。
その言葉は、たとえば
「わたしは、先生と言われるのはいやや。『先生』という言葉を大事にしたいからな、学ばせてもろた人を先生と呼びたい。先生といわれるより、『いっちゃん』と言われるほうが好きや。 先生と呼ぶほうが無難やから、みなさん先生と言わはるけど、わたしはいやや。 本音が好きなんや。」

わしは、ほんまに岡部伊都子先生から、大事なことを学ばせてもろた。
だから、本音で先生と呼ぶ。
先生は今年83歳。この本は、先生の129冊目の著作である。

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コメント

岡部伊都子さんはまだ読んではいませんが、
日本人より海外の方が
絶賛しているのを知って名前だけは
存じていますよ。
今度ぜひ読ませてもらいます。

投稿: 松風 | 2006.03.07 22:24

松風さん、是非読んでみてください。
わしが挙げた新潮社の本はもう絶版かもしれません。なにせもう30年も前に書かれた物ですから。でも、新しい著作集や単行本もかなりあります。

投稿: 龍3 | 2006.03.07 23:30

ちまたには京都観光に関する本が氾濫しています。
春の桜の時期を狙った特集もどこも競っているようです。
「穴場」「隠れ。。」と言っても そんな風にとりあげちゃぁ 隠れ。。でも穴場でもないでしょ?って感じですか。
一時期そういう本に頼ったこともありましたが、今は龍さんが紹介してくださったような おとなしい本が好きです。

誰もが京都。。という風潮があるからこそ、自分らしく京都を見たいのですもの。

投稿: yume | 2006.03.08 20:28

yumeさん、おっしゃるとおり、京都観光に関する本や雑誌はものすごい数が出ておりますね。わしも時々、手に取ります。長い年月に買い集めた量もかなりのものになりました。
そんな中、岡部伊都子先生の本、ますます輝きが濃くなります。先生の本は、京都を取り上げても、他の何でも、自分の魂を投影して描いてるんですよ。
単なる知識の引用や誰かの感想の引き写しでない、自分だけの京都を、わしも描いていこうと努力してます。

投稿: 龍3 | 2006.03.09 00:02

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