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2005.10.12

さらば夏の光よ

sihen-8

若くして逝った詩人たち、立原道造・矢沢宰・津村信夫の、秋の歌を紹介してきた。
なぜか、いま、そうせずにいられなかった。
僕がそうだったように、今の少年少女たちは、これらの詩を愛してくれるだろうか?
もはや詩は、若き魂をふるわせるものとはなり得ないか?

「さらば夏の光よ」
これは、津村信夫の遺稿を、彼の兄が編纂して出版した詩集のタイトルである。
そしてもう一つ
「さらば、夏の光よ」というタイトルの小説が別にある。
これは、遠藤周作が1965年から翌年にかけて雑誌連載した小説「白い沈黙」を改題したもので、
ボードレールの詩集「悪の華」の一編「秋の歌」の冒頭からとられているという。

その冒頭の一節は、こうだ。
「やがて沈まむ、冷ややかなる闇のさなかに。
さらばよさらば、束の間の夏の光の烈しさよ。
既に聞ゆる 中庭の甃石(しきいし)の上(へ)に
惨(いたま)しき響を立てて 落つる薪(まき)。」
  (岩波文庫「悪の華」鈴木信太郎 訳)

秋の歌はすなわち、青春の挽歌である。
若い生命の輝く季節が去っていくことを悼み、嘆きと哀惜を込めて絶唱する歌である。
夭折の詩人の持つ悲傷のきらめきこそ、その象徴となるであろう。

小説「さらば、夏の光よ」もまた、青春の挽歌だった。映画(1976年松竹・郷ひろみ・秋吉久美子主演)やテレビドラマ(1984年CBC・岡田奈々・柳沢慎吾主演)にもなった哀切の物語。
僕は既にぼろけて疲れた中年男だが、秋になると、たまらなくこれらの詩や小説が呼びかけてくる。
そしてまた、物語を書こうと決意する。
まだ、小説も詩も、死に絶えてはいない。その力を信じて、僕はあがく。

あがきながら、また、呟く。
さらば夏の光よ
永遠にいとおしい青春よ

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コメント

始まりを予感させる写真だと。

投稿: pastorella | 2005.10.14 00:38

始まり、ですか?
うむ、そうなのかも、しれない・・・

投稿: 龍3 | 2005.10.14 01:29

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