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2005.07.02

随想・祇園祭 その壱

祇園祭と市川雷蔵
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 京都の七月を彩る祇園祭は、八坂神社の祭礼であると共に、京都の町衆が誇りとし、心から楽しむ祭りである。
その八坂神社の朱塗りの西楼門をくぐると、すぐ両側に石灯籠が立っている。
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 右側の石灯籠に刻まれている名前は
  三代 市川寿海
  八代 市川雷蔵
であるが、寿海は名門の歌舞伎役者であり、雷蔵はその養子で、歌舞伎役者でもあったが、大映のスターとして一世を風靡した俳優である。
 わしは、銀幕で眠狂四郎を演じた最高の役者であるこの人のファンであるが、彼は1969年、三十七歳の若さで逝った。命日は七月十七日。祇園祭、山鉾巡行の日だった。
 そんな彼の残した下の手記は、祇園祭の宵山について書かれた、おそらく最も美しい文章だと思うのだ。

「結婚して以来二人で京都の町へ出かけても、映画館であれ、百貨店であれ、私たちは絶えず周囲からの視線の集中攻撃にあって当惑するのが常でした。なにがそんなに珍しいのか、ジロジロと興味あり気な目で見られると、全く身体まですくむ思いでした。
 ところが数年ぶりで出かけた宵山では、私は全然期待もしていなかった快い気分に浸ることができました。鉾や露店や人出は年々歳々同じことで数年前と変わるものではなかったのですが、かつては一人で歩いたのにくらべて、今度は二人で手をつないで大勢の男女と入りまじって歩いた気分だけはまったく、予期もしない幸福感に溢れる思いでした。
 自分でもよく説明できない気持ちでした。たしかに老若男女さまざまな連れの中にもまれて、私たちの若さ、しあわせといったものをしみじみと感じるような、生まれて初めての宵山情緒だったのです」
(「市川雷蔵かげろうの死」田山力哉著・講談社刊より、引用 ☆下の写真の左の本である)

gionmaturito_0011 複雑な生い立ちを持ち、スターの孤独の中、夭折した彼が、ほんのつかの間味わった、新妻との幸福の象徴が、宵山見物だったのだ。
 祇園祭の宵山には、彼が語ったとおり、老若男女誰もが心華やぎ、生きる喜びを噛み締められるような、不思議な雰囲気があると思う。

☆祇園祭について書かれたblog記事でモヨコさんの「コトモノBLOG」の「祇園囃子が聞こえる」が、わしの書こうとした宵山への思いに近いと思いました。

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コメント

龍3さん、おはようございます。
素晴らしいトラックバック、本当にありがとうございました。
読ませていただいて、
言葉にならないくらい気持ちが入ってしまっています。
このことを知ることができて、本当によかったです。

龍3さんのお名前をお借りして、エントリーに追記しました。
これからもよろしくお願いします。

投稿: モヨコ | 2005.07.02 06:32

明るく元気で華やかなお祭だからこそ、その陰に隠れているそれぞれの人生の悲哀がより大きく感じられるのでしょうね。

運動会、満開の桜、修学旅行。。
の思い出とともに哀しみに似た気持ちがわきあがるのはそういうところからなのかもしれません。

ん。。うまく文章になりません。

投稿: yume | 2005.07.02 17:27

☆ モヨコさん、お褒めに預かって恐縮です。気持ちが通じて、とても嬉しく思っています。トラックバックしてよかったとしみじみ思いました。
この記事をエントリーに追加してくださって、光栄に思います。こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。

☆ yumeさん、祇園祭こそは、華やかさと豪華さに加え、勇壮であると共に繊細、陰翳に満ちて、限りなく心惹かれますね。
そして、思い出は甘い出来事であっても、どこか哀しみを滲ませるかもしれません。それが人生、だからでしょうかね。

投稿: 龍3 | 2005.07.03 00:11

TBありがとうございます。
今年もこの季節がやってきました。

投稿: 松風 | 2005.07.04 12:41

松風さん、もうローカルニュースでは毎日、祇園祭の様々な行事が報道されてますね。
とりあえず、10日の鉾建ての夜には、四条界隈をうろつく予定です(^^)

投稿: 龍3 | 2005.07.04 14:04

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受信: 2005.07.04 12:42

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