« 京の雪舟寺・芬陀院 | トップページ | 醍醐の一言寺 »

2005.06.18

小説「流れのほとりで」第十六回

nagarenohotori_004

----------
 恩田と美沙子が去って、翌日は寒波が訪れ、京都は薄い雪に覆われた。
 英輔はまた、出町柳で川を見ていた。ふさいだ気持ちを少しは晴らそうと、歩いてやってきたのである。
(ここから仰ぐ比叡山は、故郷飯田の風越山に似ている、と思うのは、自分だけだろうか・・・)
 共に飯田から京都に来た沢井は、故郷を捨てている。言葉も京都弁を使い、京都人になりきろうとしている。だが、英輔にそれは出来ない。
(あいつのやり方は、間違っている。どんなに金を稼いで、京都に人脈を作っても、あいつは京都を好きなわけじゃない。京都に溶け込もうとしているわけではないんだ)
 しかし、省みて自分はどうなのか、という問いが、英輔をさいなむのだ。
 美沙子を見て思い出した、かつて自分が恋した舞妓・・・彼女とは無残に訣別を迎えるしかなかった。その時点で英輔は京都を去っても良かった・・・いや、そうすべきだったかもしれない。
 亀の形の飛び石を、無邪気に跳ねて行く少女たちを眺めながら、英輔は、封印していた記憶を掘り起こす。
----------

|

« 京の雪舟寺・芬陀院 | トップページ | 醍醐の一言寺 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/20826/4599713

この記事へのトラックバック一覧です: 小説「流れのほとりで」第十六回:

« 京の雪舟寺・芬陀院 | トップページ | 醍醐の一言寺 »