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2005.04.23

小説「流れのほとりで」第八回

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 山科の喫茶店から、タクシーを走らせて東山トンネルを抜け、英輔は東山七条の智積院に美沙子をいざなった。
 冬にしては驚くほどの明るい日差しが、書院の庭園を照らしている。瀧音が聞こえ、池の豊かな水面が広がっていた。 
「そんなに大きな庭ではないんだけど、迫力あるでしょう?」
「ええ、山がすぐそこで、わあ、池は、縁側の下まで!」

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 二人は縁側に座って、しばし庭を眺めた。
「枯山水のお庭より、この方が心が潤ってありがたいわね、特に冬には」
笑顔の美沙子に、英輔も笑って頷いた。
「ここは、真言宗のお寺で、禅寺じゃないですしね。僕も、水のある風景のほうが好きなんです。川のほとりで育ったからかな。京都も、流れと山の景色があるから、すぐに馴染んだというか、どこか懐かしいんですよね」
「懐かしい、うん、わたしもそれには同感だわ」
 二・三人のグループの観光客が二組ほどやってきただけで、ずっと庭は静けさの中にあった。気がつくと一時間近く、座っていたことに気付いて、英輔は立ち上がった。
「美沙子さんは、歩くのは自信ありますか?」
「ええ、山育ちだから」
生き生きとした表情の美沙子に、英輔は泉涌寺まで歩いていくことを提案した。
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