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2005.03.23

小説「流れのほとりで」第三回

kawaramati

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「地獄てなんや・・・大層やの」
沢井はハンドルを握りながら、呟くように返す。
「きっと、どんな町にもあるんだと思うさ。京都じゃそれが一目でわかってしまう。あまりにも対照的だからな」
「確かに、俺らの最初に住んだトコは、学生アパートちゅうコンクリートの箱で、夏は蒸し風呂、冬は冷蔵庫やったがな・・・地獄呼ばわりはないやろ」
 沢井は苦笑いしている。
「まあ、そないな御託は、お客さんに披露したらええ。辛口の京都案内いうて、わりと受けとるさかいな。けど、踏み外したらあかんで」
「わかってるさ・・・」
 英輔はシートに身体を埋めて、流れ行く河原町の明かりをぼんやり見た。

 その宿は、四条河原町の賑わいからほんの少し離れただけの場所にあったが、本格的な町家造りが屋並に溶け込み、静謐なたたずまいである。一日三組しか泊めない小さな旅館で、元は日本画家の家だったそうだ。
 沢井は大胆に狭い路地にベンツを乗り入れ、宿のまん前に停車する。素早く車を降りて、英輔を連れて玄関に向かう。
 格子戸を開けると、花と香のかおりが漂った。案内を請う沢井のがさつな声が静寂を破る。
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