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2005.02.01

小説・「残光」第八十四回

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「さあ、今なら・・・詩織に、言葉は届くさ」
 景子は、詩織に近づこうとしてふらつき、床に跪いた。見上げて、声を絞り出す。
「うちは、詩織が好きやった。なのに、あんなひどいことをした・・・ごめん!それが、言いたかったんや・・・ずうっと、言いたかったんや」
 少女が頷くのを見届けると、景子は床に倒れ臥した。
 竜生が景子の側にしゃがみ、やはり少女を見上げて呟く。
「信じて、くれるかな・・・おれも、あの夏と、みんなが、宝物やったんや。あの想い出を守ろう思うて、かえって、こんなメチャクチャをやらかしてもうた・・・。おれ、まちごうてたわ」
 竜生は鍵とジッポーを部屋の隅へ投げ捨てた。ゆっくりとそれに近づいて拾い上げ、ポケットにしまった健二は、緑の小瓶をかざした。
「ありがとう、詩織。お前が、みんなを、助けてくれたんだな・・・」
 そして、立ち尽くす少女に視線を移し、健二は、はっと顔色を変える。
「君が・・・ここへ来たのは!駿の病気が・・・」
 閃くように顔を向けた健二に、駿はさざなみのように微笑して、頷き、少女に言った。
「この前の検査の結果が、届いたんだね」
「うん・・・。GPSで駿の場所探して、ここに」
少女=彩夏は、震える声で言うと、駿に駆け寄り、手を握る。
「大丈夫や、きっと、きっと治る。いこ!今から、入院や」
 健二が彩夏に訊ねる。
「車はあるのか?美咲は?」
彩夏はかぶりを振る。
「タクシー拾って、この近くまで来て捨てたから」
 健二は、竜生に駆け寄り、引きずり起こす。
「竜生、すぐに車を出せ!駿を乗せて、病院にいく!」
戸惑った竜生は、説明を求めて駿を見る。駿は微笑を崩さず、告げた。
「僕は、治癒する可能性の低い病気に掛かっててさ。悪い兆候が出たらしい。でも、負けやしないよ」
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