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2005.02.01

小説・「残光」第八十三回

ikari

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 竜生の背中に飛び掛り、床に薙ぎ倒し、ねじ伏せた健二は、しかし、相手がまるで抵抗しないのに気付いて不審な表情になる。
 倒れた竜生は目を一杯に見開き、恐怖の叫びを発した。
「嘘や・・・詩織が、死んだはずの詩織が、なんでここに!」
 景子が、よろめきながらテーブルを離れ、ドアに向かって歩み寄る。畏怖と同時に、歓喜の表情が景子の顔にあった。
「詩織!・・・会いたかった!うちを・・・許してとは言えへんけど・・・」
 真那が、朦朧とした表情で呟く。
「これは、きっと、夢なんだよね」
 戸口には、ハイティーンの少女が立っていた。長い髪を肩に垂らし、うす青いTシャツとスカートを着て、サンダル履きで、電灯に照らされるその顔は悲しみに満ちている。その唇が震えて、小さな声がつむぎだされる。
「あかんよ・・・だあれも、死んだらあかんよ・・・」
 その言葉に、駿が深く頷いた。倒れている竜生にかがみこみ、抱き起こし、その耳元に駿は呟く。
「もっと早く、僕たちは、会って話をしなくちゃいけなかったな・・・詩織のことも、景子のことも、相談しあえば、こんなことにならなかったんだ・・・でもね、遅すぎることはないんだ。まだ、なんとかなる!生きてさえいれば!」
 だんだんに力強く話し、駿は竜生を立たせた。振り向いて、健二に泣き笑いの顔を向ける。
「健二も、ひとりで突っ走りすぎだったよ。いつも、そうだったけどさ」
 健二は、詩織の面影を持つ少女を見つめながら、深く息をつき、テーブルの上の小瓶を握った。
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