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2005.01.12

小説・「残光」第七十六回

dna

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 テーブルの上に置かれたのは、小さな薄緑色の壜である。健二はその蓋を開けた。中には白い粒状の物が半分ほど詰まっていた。
「俺は神戸に行ったよ、真夜中にな。詩織の墓をこじあけて、骨を取り出した」
 真那が小さく悲鳴を上げ、腰を浮かせた。全員の目が、壜に張り付いている。
「詩織と、娘のはるかは、焼け跡で見つかったって、その文にも書いてあったな。多分抱き合っていたんだろう。そして、焼けて・・・骨は砕けて混じり合って・・・しかも、完全には焼けていなかった。そうさ、墓の中にあったのは骨壷じゃなかった。棺さ。焼け死んだ二人をもう一度焼きなおすのはむごいと・・・葬儀をした近所の人・・・近所の人たちだったんだぞ!」
健二は絶句し、壜を握り締める。
「その親切な人たちは思ったんだ。だから、そのままに、混じり合った骨を棺に納めて、葬ったんだ。俺は、その一部を取り出して・・・DNA鑑定をしてもらった!」
 畏怖の表情で真那は凍りつき、駿も目を見張って脂汗を額に浮かべている。景子はまったくの無表情になり、そして竜生は、唇を引き結んで健二を睨みつけている。
「完全に焼けていない骨だったから、結果は明瞭に出た。その骨の中から、二人のDNAが見つかって、一人は」
努めて冷静に喋ろうとしていた健二だが、激情で声が詰まった。
「一人は・・・俺と98,7パーセントの確率で親子関係だ!」
 駿が、唾を飲み込む音が大きく響き、真那の目から、涙が流れ落ちた。
「この骨は・・・詩織と、俺の娘の骨なんだ!一度も会えなかった、俺の娘の」
 壜を突きつけられた竜生は、歯を食いしばりながら、反論する。
「健二のことだから、そのDNA鑑定とやらは確かなところでしてもろたんやろな。ほんま、気の毒や。けどな・・・それと、春川先生の遺書がでっちあげやいうことが、どう関係するんや?」
 健二は壮絶に笑った。
「とぼけるなよ、竜生・・・全部、メフィストフェレスを黒幕だったことにして、自分は春川教授の遺産を手に入れる。見え透いた筋書きじゃないか。」
健二の表情が怒りに燃える。
「なにが、メフィストフェレスだ!そいつは、お前の兄貴じゃないか!竜生、ええ、ばれないと思っていたのか!おまえはメフィストフェレスの弟なんだよ!」

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