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2005.01.11

小説・「残光」第七十五回

mefist

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 沈黙が部屋を支配していた。どこからか舞い込んだ蛾が、電球の周囲を飛び回り、小さな身体に不似合いな巨大な影を部屋中に撒き散らす。やがて蛾が荒壁に止まったとき、低い笑い声が湧いた。
「・・・奇麗事に、書き直したな、まったく、下手な作文を!」
笑いながら、吐き捨てるように言ったのは、健二だ。
 竜生が胸を反らし、細めた目で健二を見下すようにする。
「書き直した?作文?なにを根拠に、そないなこと・・・」
 健二はゆっくり立ち上がり、壁に片手を突いて寄りかかると、深く嘆息する。
「景子と竜生だけさ、春川教授の文章を読んだり、書いた文字を見たことがあるやつは・・・。二人ででっち上げればなんとでも書ける。そうする時間も十分あっただろうさ」
「健二・・・そんな・・・」
真那が、遺書をテーブルに落とし、悲痛に顔を歪める。駿も蒼白になっている。だが、景子は変わらず平然とした表情で、竜生もまた、傲然としていた。
「健二、おまえ、なんでそんなにひねくれてもうたんや。俺ら、友だちやろ。黄金の六人やったやんか」
竜生の言葉に、健二は壁に拳を叩きつけ、咆えた。
「ああ!黄金だと信じていたさ!けど、メッキだったんだ!俺は、そいつを剥がしちまったんだよ!」
 振動した壁から、蛾が再び飛び立ち、狂ったように舞う。健二はポケットから何かを取り出し、テーブルに音高く置いた。
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