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2005.01.29

小説・「残光」第八十一回

kaitaigo

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 景子は、竜生の声を無視して、真那の肩を揺さぶる。
「辛かったんは真那かて一緒やろ!みんなが、真那が健二を好きやいう事、わかってた。けど健二は、真那とつきおうてるように見せながら、詩織とくっついてたんやで!そやのに、あのあとも、真那は健二のことずっと好きで、それを無理して忘れようおもうて、駿と結婚したんやんか!」
 竜生が茫然とドアにもたれて、呻いている。
「ほな・・・景子も、詩織のことを忘れようおもうて、おれと婚約、したんか?」
「そうじゃないわ・・・それは、違うよ、景子も、竜生も!」
真那が、力を振り絞って、悲痛に叫ぶ。
「ちごうてへんよ・・・」
真那の髪を撫でながら浮かべた景子の笑いが壮絶で、竜生も健二も金縛りにあったように動けない。
「うちとパパは、竜生を地獄に巻き込んだんや。京都の人間やのに、裏表のない竜生を、利用したんや。いくらうちらが悪党でも、少しは竜生に、ええ目見せたらな、可哀想やん・・・そうおもて、婚約した。けど、うちは、どんどん駄目になっていくばっかで、竜生も怯んだやろ。婚約破棄したんは・・・だから、お慈悲や。それがわかってたから、すぐに竜生も、今の奥さんもろうて、家庭を持って、京都から逃げたんやろ」
 景子の言葉に、竜生がヒステリックに笑い声を上げる。
「あはは・・・景子が言うてる通りや、いう気がする。けど、それが全部やあらへん!なにがほんまもんやったか、もう・・・わからんようになってしもた!もう、どうでもええわ!」
 竜生は仁王立ちになり、狂的に輝くまなざしで、部屋の中の全員を見据えた。
「あの夏の終り、蝶類研究所を、とうとう潰したあの日・・・おれはものすごく、寂しかった。ほんで、みんなを、このうえのう、いとおしく思うた。あの日に、帰りたいと何度思うたか・・・そやし、こうするしかないんや!」
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