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2005.01.23

小説・「残光」第八十回

moeruhana

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 景子がテーブルの端を掴んで、無理やり立ち上がる。目は怒りに吊り上がり、凄絶な表情である。
「こんなクスリ・・・うちにはよう効かへんわ・・・言うとかなあかんことがあるんや」
 必死に、健二を振り返る景子の瞳に、涙が溢れた。
「うちは、ナイフで詩織を刺した。それは、間違いのないことや。さっきの遺書には、パパを刺すつもりで、間違って詩織を傷つけたって、書いてあったけど・・・うちは、あんとき、パパなんてどうでもよかった!」
「景子、もうええ、やめえや」
竜生が口を挟むが、景子は聞く耳を持たない。
「うちは、みんなが好きやった。竜生も、健二も、駿も、真那も、詩織も、愛してた!六人で過ごす学生時代が、多分、一生の宝物になると思うて、大事にしてた。それが、あの瞬間に壊れた!うちは、悲しかったんや・・・あの時、うちは、詩織とパパに、メロンを出してあげよ、おもて、皮剥いてた・・・でも、話の中身を聞いてしもうて、夢中で二人のところへ走った。ナイフ持ったままやった・・・あん時うちは、詩織と心中、したかった!」
 涙を流しながら、天井を仰ぐ景子の顔は、凄艶に美しい。
「うちは・・・ずっと、恋したことない女の子やった・・・、別に恋愛なんか必要なかった・・・六人の仲間でいるのが何より楽しかった・・・でも、詩織には、なんか、特別な気持ちがあった・・・あんなん、生まれて初めてやった・・・綺麗な詩織と、時々、黙って見詰め合うことがあると・・・うちは、どきどきした。ふざけて、詩織の肩を抱いたりすると、胸が苦しくなった・・・でも、それだけで幸せやった・・・一生、そんな気持ちを持ちながら、詩織と友だちでいるつもりやったのに・・・」
 竜生すら、景子の言葉に愕然としている。だが、真那は、眠気と戦いながら頷いている。
「知ってたよ、景子。だから、景子は・・・辛かったんだね・・・」
「じゃあ・・・おれと婚約したんは、そんで、それを、破棄したんは・・・」
竜生の声がかぼそく、震えた。
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