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2005.01.21

小説・「残光」第七十九回

honoo

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「先生は、詩織とおれのくそ兄貴に、罪を全部押し付けて、あの場はほっとしてた。けど、それから、ちっとも研究に身が入らへんと、大学での出世も滞った。それを、あの横流し事件のせいや思うて、おれに当たりよる。かと思えば、詩織への罪悪感になやまはって、おれに泣き付く。景子かて似たようなもんやったやろ。フランスに留学に行ったものの、何にも成果はあらへん。遊びに逃避して、あげくに麻薬漬け。困ったときだけ、おれに電話して来よったな」
 景子が、歯を食いしばって呻き声を上げ、竜生を睨む。
「今になって・・・そないなこと、言うやなんて・・・あんたを、見損のうてたわ。」
「おれがどんだけ、破滅を食い止めようおもて、努力してたか、わかるんか?くそ兄貴の悪業をしょわされて、それでも何とか罪滅ぼししよ、おもて、おれは、先生を支え、景子を助けて、自分の家庭を放ってきたんやで。」
 健二が吐き捨てるように口を挟む。
「奇麗事を言うな。でっちあげた遺言書と同じような台詞になってきてるぞ。春川教授も、景子も、竜生も、みんなぐるになって、詩織を傷つけ、神戸に追いやった。震災の起きるあの場所へ行かせたんだ。おれから、ずっと隠し続けて・・・死ぬ前から、葬り去ってしまっていたんだ!」
 真那が、朦朧とした目を必死に見開きながら、叫ぶ。
「みんな、やめて!こんなこと・・・こんなの、詩織だって望んでいないよ!悲しんでるよ!」
 倒れそうな真那の肩を、駿が抱えて、竜生に向かって目を据える。
「そうだよ、竜生・・・いくら言葉を重ねてもね、態度が裏切ってるよ。ワインに睡眠薬入れたなんてね・・・まず、その理由を聞かせて欲しいよ」
 竜生は沈黙した。部屋のレトロな照明が、真夏の夜の熱い空気に点火しそうに赤い。
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