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2005.01.20

小説・「残光」第七十八回

rakujitu

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 竜生の顔は、泣き笑いの表情である。乾いた目が瞬きもせず、強い光を放っている。
「これやから、京都なんいう土地は、狭苦しくて、うっとおしい縁が絡みまくってて、かなわへんのや!会うたこともあらへん兄貴のけつを、おれがなんで拭かなあかん・・・そやのに、春川先生は、おれをさんざん、下僕みたいにあつこうた挙句、景子と結婚させてくれへんかった!」
 景子が立ち上がろうとしてよろめく。テーブルに手を突いた拍子に、ワイングラスが倒れて砕ける。
「・・・景子?」
支えようとした真那の顔が歪む。激しく瞬きをし、自分の目をこする。
「どうしたんだろ、なんだか、とても・・・眠い・・・」
 景子と真那は、肩を抱き合うようにして、お互いを支えあう。駿がその様子を見て、鋭く竜生に叫ぶ。
「竜生、お前、ワインに、睡眠薬、入れてたのか!」
 健二は深くため息をつき、竜生に一歩、歩み寄る。
「やっぱりな・・・。何のつもりなんだ?」
「わかるやろ・・・おれらのことを、犬みたいにかぎまわったんやろ?」
開き直って笑う竜生に、眉をひそめ、健二は沈痛に言う。
「メフィストフェレスのことを、お前があの頃は知らなかった・・・というのは、本当みたいだな。だがな、春川先生に知らされてから、お前は、なにをした?それからも、お前は春川先生の下僕だったんじゃないか!」
 竜生は鼻で笑い、言葉を続ける。
「ああ・・・おれは、大学から追い出されたら行くトコなかったしな。先生に言われて、詩織の様子を見に行ったりしたで。先生は、はるかが自分の娘やと思いたがってたしな・・・。それに、景子のことを放ってはおけへんかった・・・どんな気持ちで、おれが、春川先生と景子に尽くしてきたか、わからへんやろ・・・沈んでいく夕日を、止める方法もなく見守ってるような、気分やったな・・・」
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