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2004.12.08

小説「残光」第七十回

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 封書から引き出された紙は、鳩居堂製の和紙の便箋であった。分厚い束を手に取り、真那は緊張のまなざしで唾を飲み込む。やがて、意を決して朗読を始めた。
「この文章が、君たちの目に触れるとき、私は幽明境を異にしている。このような卑怯な形でしか真実を告げられなかった私を、許してくれたまえ。
 すべてを冥界に持っていこうと考えたこともあった。しかし、景子が苦しみ、今のような事態に至ったことは、すべて私の因果の報いだろうか。私が真実を伝えれば、景子を闇から引き出してやれるかもしれない。
 そして、とりわけ、柳田君には、取り返しの付かないことをしてしまった。その責任を取らないままに、私は逝く。せめて、謝罪の言葉を伝えたい。」
 それが、前置きだったらしく、真那はいったん言葉を切り、目を上げて景子と健二を見つめた。景子が凛と胸を張り、促す。
「続けて読んでよ、真那」
「・・・あの夏の日、君たちが楠本蝶類研究所に集まった。私は景子と溝口君を除いて、初対面のように接した。けれど、詩織とは、その一年ほど前に出会っていたのだ。私は、あの頃、教授に昇進して、意気軒昂としていた。交際範囲が劇的に広がり、憧れていた祇園の花街にも踏み入れることが出来るようになった。君たちにとって青春であったあの頃、私もまた、遅すぎる青春を味わっていたのかもしれない。
しかし、私の踏み入れた道は汚れ、まがまがしいものであった。向日葵の咲く研究所で笑う君たちが、どんなにかまぶしく見えたことか。そして、その輪に必死に溶け込もうとする詩織の痛ましさに、私はおのれの罪を意識したのだった・・・」
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コメント

すみません、龍3さん、Crunch@Aurorhythmです。まちがって、トラックバック2回送ってしまったので、ひとつ削除していただけますでしょうか。。お手数お掛けいたします。

投稿: Crunch | 2004.12.10 19:00

了解しました、Crunch@Aurorhythmさん。
わしの小説へのコメントも、一言なりともいただけると嬉しかったです(^^;)

投稿: 龍3 | 2004.12.11 00:09

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『Prologue』 昔、すごく好きになった人がいた。 風のような人だった。 1 [続きを読む]

受信: 2004.12.10 18:52

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