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2004.12.18

小説・「残光」第七十二回

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「一体どこから話を聞きつけたのか、メフィストフェレスが私に、悪魔の取引を持ちかけてきた。解体作業の一切を、ある業者に落札させること、そして、研究所の所蔵物のうち、金目のものの横流しをさせよと。それと引き換えに、『S』の付けを帳消しにすると。断れば、未成年である詩織とのことを、スキャンダルとして大学に通報すると脅したのだ。
私は、巨大な蜘蛛の巣に絡み獲られた哀れな獲物に過ぎなかった。メフィストフェレスの言いなりに、あの研究所の貴重なコレクションを隠蔽し、ブラックマーケットに売ったのは私だ。」
 真那が震える声でそこまで読んだとき、景子が首をかしげて尋ねた。
「その、メフィスト、とかいうの、どんな意味やったやろ?」
健二が腕を組み、視線をテーブルに落としたまま、答えた。
「ゲーテの書いた『ファウスト』って小説、知ってるだろ?主人公ファウスト博士が快楽を求めて魂を売った悪魔の名前さ。博士の悪行の手引きもした」
「ああ、なんとのう、思い出したわ。パパをよう連れまわしてたあん人が、たぶん、そやったんやな」
 景子は微笑し、真那のグラスの隣にあった、自分のワインに口を付ける。そのしぐさを見つめる竜生の表情が異様に強張っている。
 真那は息をつき、再び朗読を始めた。
「私の大学とあまり関係のないところから、実務のアルバイトを採用したのは、横流しをやりやすくするためだった。そして景子や君たちが集まった。その中に、詩織を見つけたとき、私は息も詰まるくらいに驚いた。『S』やメフィストフェレスの差し金だと思った。
 だが、違っていたのだ。詩織は何も知らず、自らの意思であのアルバイトに参加したのだ。彼女もまた、私を見て驚愕した。私がそのことをメフィストフェレスに告げると、あの男は詩織を利用する方策を考え付いた。
 そうだ。私は、あの男にそそのかされ、詩織を生贄にした。すべての罪を彼女にかぶせて、スケープゴートにしたてたのだ。」
 駿が椅子を鳴らして立ち上がり、窓から外を見て、呻くように言った。
「なんてことだ!初めから、そのために、僕たちは、あの夏を過ごしたのか・・・」
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コメント

初めまして、るるがと言います。小学生で色々とこちゃこちゃ書いているブログを開いている者です。

この度、「dragon-tail」さんの小説「残光」をわたしのブログの記事、「インターネットで読む小説」にて、勝手ながら紹介させて頂きました。
トラックバックもさせて頂きました、すみません…。
良ければ、見に来て下さいね。

投稿: るるが | 2004.12.22 22:52

るるがさん、コメントおおきに!
トラックバックも歓迎いたします(^^)
「残光」もご紹介いただきまして、嬉しく思います。
小学生で、blogを使いこなしておられるのですね。時代遅れのおっさんとしては、舌を巻いてしまいます。
るるがさんの小説も是非読ませていただきます。
わしも、振り返れば「小説」を書き始めたのは小学生の頃でした・・・

投稿: 龍3 | 2004.12.23 01:04

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