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2004.11.24

小説「残光」第六十六回

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 やがて車は、東鞍馬口通りとの交差点に差し掛かり、瓜生山の斜面に建つ京都造形芸術大学の、神殿のような校舎の下を過ぎる。
「ここも、変わったなあ・・・」
駿が、見上げながら嘆息する。すると、車は右にウインカーを出し、細い道を山に向かって登り始める。
「なに?そろそろ着くの?」
揺れる車内で、真那がやや顔をこわばらせて竜生に訊く。
「ああ、一応、山荘なんや。趣味でこさえたやつやねん。こういうときに使わな、思うて。掃除しといたさかい」
 街灯もない坂道はすっかり闇に閉ざされ、つい今までの白川通りの賑わいが嘘のようだ。四輪駆動の力強さで車はやすやすと走っていくが、道は狭くなる一方である。側溝の上にかぶせた鉄板がガタガタと鳴る。道端に伸びた木の枝や笹が、車の窓を擦る。
 強引だが自信に満ちた運転で、車は曲がりくねった坂を登りきった。眼下に京都の夜景を見下ろす、比叡山に続く山肌の中腹である。砂利を踏みしだいてオフロード車は停止した。窓から見える景色に真那が嘆声を漏らす。
「すごい、こんなとこに、学生時代に来たかったな!」
 健二は、夜景と反対側を見て、愕然としていた。そこには、木造二階の小さな建物があり、ガラス窓から灯りが漏れている。そのたたずまいは・・・
「おい、これは・・・なんだ?あの、楠本蝶類研究所、そのまんまじゃないか!」
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コメント

コメントありがとうございました。お初にお目にかかります,shippoと申します。
過去ログ辿って、最初と最近の部分だけ……という、邪道な読み方をしちまいました(お許しください)。情景が手に取るようにわかる文章でほんとうにお人柄が窺われます――なんて…「主夫兼小説家」とあるので…もしやプロの方??(;^_^A  では?―――またお会いできますように。/不尽

投稿: shippo | 2004.11.24 05:20

shippoさん、コメントおおきに!
読んでくださって嬉しいです。そちらのblogのコメントでも感想を書いてくださって、光栄です。
兼業小説家で、稼ぎもあまりないのですが、心意気はプロ!であります(苦笑)また、よろしくお願いします。

投稿: 龍3 | 2004.11.24 23:40

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