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2004.11.22

小説「残光」第六十五回

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 残光はひと時もとどまることなく変化していく。雲は流れ、光は薄れ、輝きははかない。
 竜生の運転するオフロード車は、神宮道を北上し、疏水を渡って平安神宮をかすめ、丸太町通りに出ると、右折して天王町に向かい、その角からまた北へ折れて、白川通りを疾走する。
「どこまで行くの?」
昔話に和んでいた真那が、ふと真顔に戻って訊ねた。
「すぐそこや。それにしても、みんなでこうやって喋ると、ほんま、あの頃に戻ったみたいな気分や。真那もちっとも変わってへんなあ」
竜生の嘆声に、真那はまた顔をほころばせる。
「あのスキーのとき、板持って行ったの、景子だけだったでしょ。ウェアも、彼女は新品、私は友達に借りたのよ。ずっと景子はお嬢様だったのよね」
駿も笑う。
「まだバブル景気の前だったからね。だから、あんなアルバイトに僕ら、とびついたんだ。3Kなんてものじゃない労働だった」
 景子の名前が出たとき、竜生の表情が僅かに動いたように、健二は感じた。
「ずっと、気になってたんだけど、景子の具合はどうなんだ?」
健二の問いかけに、竜生は間髪をいれずに答える。
「ずいぶん良うなったで。けど、大勢の人前に出れるにはしばらくかかるやろな。でも、大丈夫や」
 真那が遠慮がちに、竜生に聞く。
「景子は・・・もう、クスリに頼らずにやっていけそうなの?」
「当たり前や、あの景子やで。俺らの誰より強かったあいつや。ほら、明石の海に泳ぎに行って、鮨に全員あたったことがあったやんか」
「あったあった!みんなひどい目にあったのに、景子だけぴんぴんしてたね。鋼鉄の胃腸だって呆れたんだよ」
はしゃぐ駿から、顔をそむけて、健二は消えていく残光を追っている。
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