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2004.11.22

小説「残光」第六十四回

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 電話を掛けてきたのは竜生である。
「今、春川先生の家や。ご親戚はついさっき、帰らはった。健二たちは、どこや?」
 健二がホテルの名前を告げると、竜生は少し沈黙したが、すぐに指示する。
「ほな、俺の車で迎えに行くさかい、あと十五分したら玄関に出てくれるか?」
「わかった。で、どこで話をするんだ?春川先生のところか?」
「いや、ちょっと別に場所をとったんや。なに、時間はかからへん。けど、真那には、そこチェックアウトしてもろうたほうがええな」
「え?どういうことだ?泊りがけで喋るってことか?」
「みんなが集まったんは、随分久しぶりや。ゆっくりしよやないか。」

 残光に照らされる玄関に、オフロード車の無骨な車体が横付けになる。身軽に運転席から降りてきた竜生は、真那のスーツケースを荷室に手早く積み込んだ。
「今は、こんな車に乗ってるんだね。あの頃は、竜生の親父さんのセドリックをこっそり借りて、みんなで琵琶湖やら舞鶴やら、ドライブに行ったっけ」
 二列目の座席に収まった駿が、八人乗りのゆったりした車内を見回しながら嬉しそうに言う。
「一編だけやけど、スキーにも行ったで。誰も滑り方知らんと、最高のドタバタ道中やったなあ」
竜生も朗らかに白い歯を見せて笑う。助手席に座った真那も、懐かしそうに微笑んだ。
「ナイターで滑った帰り道に、健二が迷子になって、ホテルに帰ってこなかったわね」
「大騒ぎして、みんなで探しにでようとしたら、健二、雪まみれになって裏庭からスキー履いて食堂に突っ込んできたんだよ」
駿が、腹を抱えて、横に座る健二を指差す。
「笑うな。そのあと、飲めない酒飲んで、風呂場でひっくりかえってたのは駿だぜ」
仏頂面で健二が言葉を返すと、車内はさらに笑い声で満ちた。 
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