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2004.11.19

小説「残光」第六十三回

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 夕雲を染める残光が、何かを予兆するかのように壮烈である。
「すごい夕焼けだな・・・」
ガラス越しに眺めながら、健二が呟くと、駿と真那も視線を空に上げた。
 数週間前、美咲が仕事で寄っていた東山のホテルである。景子が定宿にしていたここに、今は真那が部屋を取っているのだ。ノースリーブの白いワンピースに着替えてきた真那と、そのままホテルのレストランで夕食を摂っている。駿も真那もあまり食欲はない様子だが、健二は健啖にステーキを食べ、珈琲をお代わりした。
「春川先生の遺書って、なんだかそんなの聞かされるの、気が重いわ」
 ピラフの皿にほとんど手をつけず、真那が口を尖らせる。アイスティーばかり飲みながら、駿も頷いた。
「僕が教えたとおり、神戸に詩織の墓はちゃんとあったんだろ?確認してきたそうじゃないか」
「ああ」
「だったら、別に何もショッキングな内容じゃないよ。大体はもう、予想がつくさ」
「どんな中身だと、駿は思うんだ?」
残光から目を離さすに、健二は問いかける。
「蝶類研究所コレクションの横流しのことだと思うよ。あれは、自分に罪があった、許して欲しい、そんなことが書いてあるんだと思う」
 その時、健二の携帯電話が鳴った。パッヘルベルのカノンは、凄絶な残照のなか、弔鍾のように聞こえる、と健二は思った。
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