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2004.10.06

小説・残光(仮)第三十九回

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「そうとも、詩織は潔白じゃなかったよ。春川教授に言われて、結果的に横流しを実行したんだろう。そしてスケープゴートにされて、罪を一人で負わされた。春川教授からそれなりの報酬もあったかもしれない。俺は、調べたさ。春川教授が、あの年の十月、娘の景子の留学費用やら、かなりの額を一気に支払ったことなんかがわかったさ。それと同じ頃から、詩織は夜のバイトをかなり減らした。俺と過ごす時間が増えた。俺も、横流しの金の恩恵を受けてたかもしれないさ」
「全然・・・気がつかなかった。健二と詩織が、そんなに早くから・・・そうなの?あの夏休みの間から、もう付き合っていたの?」
真那は、そんなことに衝撃を受けたらしく、顔をゆがめている。
「駿も、真那も、俺と詩織のことは知らないさ。俺が、駿と真那の付き合いをほとんど知らないのと一緒だ。駿は、昨夜俺のことを、現実を見ないロマンチストみたいに馬鹿にしたよな。自分は詩織の足跡を猟犬みたいに嗅ぎまわったって。でも、あいつも肝心なところで現実を見てない」
 雨がやんだ空を見上げ、健二は水路閣の下から足を踏み出す。
「あいつが見つけた、彩夏って娘は、詩織の娘なんかじゃない。今朝、会ってわかったよ。彩夏自身が認めたよ。それに、彩夏は、駿の病気を知っている。ほとんど治る可能性がないことも知ってる」
 真那は唖然として立ちすくみ、言葉が出ない。
「確かに、見ていて危なっかしすぎるさ、駿と彩夏たちは。でもな、俺はあいつらを今は、そっとしてやろうかと思う。駿は、自分の命が燃え尽きるまでに、何をしたいのか知りたくてあがいてる。彩夏は、人を愛することがどういうことか、わかろうとして頑張ってる。そんな彩夏には・・・いい友達もいるしな」
 ゆっくり歩き出した健二に、真那もついてくる。雨でも賑わう方丈や金地院を避け、東山の古径をたどっていく。
「あの子が詩織の娘じゃないって、本当なの?」
「詩織の誕生日を、彩夏は知らなかったよ。あの子の両親が震災で亡くなったのは本当だけど、全然詩織のことは知らないようだ。だから俺に会って、詩織のことを聞こうと思ったらしいな」
「詩織が亡くなったのは・・・」
「それは、間違いないそうだ・・・」
「詩織は・・・震災まで、幸せに、生きたのかしら」
歩きながら、不意に真那は顔を覆い、嗚咽した。
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