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2004.10.21

小説・残光(仮)第四十六回

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「フローズンダイキリ」
慣れた様子でカクテルを注文し、景子は貪るように飲んだ。それを冷静に観察しながら、健二はバーボンの水割りを舐める。
「健二だけやね、ずっと京都に居はったんは。・・・あんたは、ほんま、あの頃と変わらへんのね」
「進歩がないだけさ・・・竜生は、まだ鹿児島で助教授だったかな」
「さあ・・・真那と駿は、東京でうまくいってるん?」
「ついこの間、京都に来てたぜ。三人で飲んだばかりだ」
「そやったんか・・・うちも声かけてほしかったわ」
数語を交わすうちに、景子はカクテルを飲み干してしまい、お代わりを要求する。早くも目の光がどんよりしてきている。健二は、決意して口調を変えた。
「その花束は、なんのためなんだ?詩織に、捧げるつもりなのかい?」
低く囁くように言った健二の言葉に、景子はごくっと唾を飲み込んだ。
「捧げる・・・って、詩織なんて、どこにいるのかもわからへんし・・・」
「詩織は、死んだよ。知ってるんだろ」
わざと微笑して、健二は景子に告げる。景子はのけぞるように健二から身を離し、無理に笑顔を作った。
「なんや・・・あんた、やっぱり詩織とあれからも付きおうてたんかいな・・・亡くならはったんか、可哀想やなあ」
「笑って口にする言葉かよ」
 冷笑して言った健二に、景子のまなじりが吊りあがり、カクテルグラスを持った手が震えた。
「なんやの・・・詩織なんて、うちらの青春の汚点やんか!おとうはんも、詩織のせいでどんだけ迷惑を・・・」
「その詩織に、恨みを買ってるって、さっき、言ってたんじゃなかったかな、景子」
問い詰めていく健二に、景子は一瞬凄まじい眼光を向け、すぐに、魂の抜けたような虚ろな目になる。
「あんなあ・・・あんたは知らへんやろけど、詩織は・・・どんだけえげつないことしとったか!それを穏便に済まそうとしたおとうはんや、うちを、あの子は逆恨みしてるんや」
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