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2004.09.13

小説・残光(仮)第二十七回

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「ほな、話が終わったら、電話しいや。迎えにきたるさかいな」
 みさきがそう言って、洋館の車回しから、軽快に発車して去っていく。
 玄関にはとても小さな看板で、「喫茶ラグナロク」と出ていた。半円筒形にガラスが張られた一階窓際のテーブルに、彩夏は勝手知った様子で座る。
 サンルームのように明るい窓からは、谷を隔てて寺院の塔が見えた。清水寺の三重塔だと、健二は気付いた。
「こんなところに、店があるなんて知らなかったな」
「なんも宣伝してないお店ですえ。知り合いはまず、来いへんし、落ち着いて話できる思て」
 彩夏も健二も、緊張を隠せずに景色を眺める。珈琲を運んできたウエイトレスが下がると、健二は口火を切った。
「奥宮詩織・・・さん、という人のことを、知っているね?」
彩夏はまっすぐに健二の眼を見て頷き、ゆっくりと答える。
「はい、うちの、おかあはん、です」
「俺は、学生時代、詩織さんと付き合っていた。駿とは、その頃からの親友なんだ」
「ええ、駿さんから、そう聞きました」
「駿と君は、どうやって知り合ったの?」
 彩夏は、うつむいて珈琲カップを見つめ、表情を殺して喋った。

「震災で、うちが潰れて、おとうはんもおかあはんも助からへんかった・・・うちだけ、あん時、京都のおばあちゃんちに来てたんです。それからずっと、京都にいました。でも、いろいろあって、友達の家に泊まるようになって、わやくちゃな暮らしをしとったとき・・・駿さんがうちを探してきたんです。昔、うちのおかあはんを好きだったんで、気になって調べて、うちを見つけたんやて。一年位前やったと思う」
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