« 小説・残光(仮)第二十五回 | トップページ | 小説・残光(仮)第二十七回 »

2004.09.11

小説・残光(仮)第二十六回

yokan.JPG

----------
 助手席に座る少女の、僅かに見えるうなじや頬の白さから、健二は目を離せない。気配を察したのか少女が振り返る。その瞳を、眩暈がするような思いで見つめながら、健二は問いかけた。
「君は、奥宮彩夏さん?」
「はい。柳田健二さんですよね?」
「ああ・・・どうやって俺の携帯番号を知ったの?」
「駿さんの携帯を覗きました。えろう疲れて帰って来はったし、うちが携帯いじっても起きはらしません。まだ駿さん、寝てはります」
 言葉を交わすうちに、車の窓を打つ雨脚が弱くなってきた。東山の山襞を分け入り、道幅は狭く、坂になっている。
「ええと、運転してるかたは・・・」
健二が戸惑いがちに聞くと、彩夏より先にハンドルを操る本人が答えた。
「うちは、彩夏の友だち。あんたらを送ってくだけやし、別に名のらへんでもええと思うけど・・・まあ、ええか。みさき、言うねん」
 髪を短く切り、ぶっきらぼうな物言いのみさきには、ボーイッシュな雰囲気がある。長い髪を背に垂らし、白い肌が光る彩夏は、姉を見るような感じでみさきに視線を送っている。
 健二は、その彩夏に、強い違和感を感じ始めていた。その理由にすぐに気がついた。
(この子には、詩織と違うところがある。それがひどく気になるんだ・・・)
 ほとんどそっくりな顔立ちだが、決定的に違うのは、耳のかたち。丸く、二枚貝の殻を思わせていた詩織の耳たぶだが、彩夏の耳は、細くて上端が尖り、全体に三角に近い。そして、一番健二に違和感を感じさせるのは、
(声が、全然似ていない・・・)
 健二は目を閉じ、詩織の声を思い出している。あまり抑揚がなく、静かに話すその声は、細く幼かった。彩夏の声は、もっと艶やかで成熟している。
「あ、見えてきたねえ。おおきに、みさきさん」
 彩夏の視線の先を追う、健二の目に、瀟洒な洋館が映った。ほとんど雨はやみ、青みを見せる空を背景に、それは清冽に立っていた。
----------

|

« 小説・残光(仮)第二十五回 | トップページ | 小説・残光(仮)第二十七回 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/20826/1407972

この記事へのトラックバック一覧です: 小説・残光(仮)第二十六回:

« 小説・残光(仮)第二十五回 | トップページ | 小説・残光(仮)第二十七回 »