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2004.09.10

小説・残光(仮)第二十五回

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 翌朝、健二は雨の音で目覚めた。時計は午前九時を過ぎている。頭もからだも重く、起き上がるのにひどく気力が要った。
 昨晩遅く、駿と別れてから、いきあたりばったりに居酒屋で一人で酒を飲み、部屋に戻ると崩れ落ちるように眠ったのである。
(夢の中に、詩織が何度もでてきたかな・・・)
 ぼんやりと考えながら、水を飲んでいると、携帯電話が鳴った。
「初めまして、うち、奥宮いいます」
若い娘の声には聞き覚えがない。戸惑う健二に、娘は緊張した声で続ける。
「駿さんと昨夜、会ってはった、けんじさんでしょ?うちは、駿さんと一緒に住んでます・・・」
えっ!と健二は驚き、携帯電話を握りなおした。
「彩夏さん、ですか」
「はい。うちと、これから会ってほしいんですけど、ご都合はよろしゅおすか?」
「・・・かまいませんが、いますぐですか?」
「ええ。車で行きますから、場所教えておくれやす」

 傘を差して、通りに立っている健二の前で、雨をはねて一台の小型乗用車が停車する。運転しているのは、二十台前半かと思われる見知らぬ女性だったが、助手席に、忘れることの出来ない顔があった。濡れたガラス越しに、健二は詩織にそっくりの少女を凝視する。少女は、窓を開け、髪を濡らしながら叫んだ。
「どうぞ、後ろに」
ドアを開けて乗り込んだ健二は、車内にこもった甘い香りに少し怯みながら、右側の席へと腰をずらした。車は激しくワイパーを動かしながら、土砂降りの雨の中に発進した。
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