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2004.09.29

小説・残光(仮)第三十四回

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「なんで、俺なんかを待っていてくれたんだ?」
 健二の問いかけに、美咲は困ったように眉を寄せ、運転しながら、買ったばかりのペットボトルの緑茶をがぶ飲みする。
「・・・うちな、ちっちゃい頃、子猫、拾てん。雨の朝、よろよろ道を歩いとったんや。引っかき傷だらけで、目もよう見えてへんようやった。でかい野良犬が、その周りをうろついて、ヨダレ垂らしてるやんか。たまらずに、拾って帰ってん」
「親に、叱られただろう」
「うん。そんで、ばあちゃんが言うたわ。きっと、この子は、おおきゅうなっても、しょもないもんばっか拾て、苦労するやろ、てな」
 何か、しみじみと温かいものが、隣に座る美咲から伝わってくるような気がして、健二は深く息を吸った。美咲は慌てて打ち消すように、話し続ける。
「ほんまの事言うとな。あんたのこと、また胡散臭いヤツが彩夏に関わってきよったなあて、見張ってたんや。彩夏は・・・あの子もな、うちに似てる。京都のおなごのくせに、情が濃くて、ほんま、しょもないもんにひっかかって、捨てられへんのや・・・それでも、愛さずにおれへんのや。あんたが、あの駿さんの友だちやいうて、彩夏に別れさせに来たのやったら、しばき倒してでも追い返したる・・・そない、思てたんにゃけどな」
「しばき倒されなくて、よかったぜ」
健二は小さく笑って、ペットボトルをつかみ、のどを鳴らして茶を飲む。美咲は安定したスピードで湖岸をクルージングする。
「・・・彩夏は、うちが十七・八やった頃と、そっくりや。なんや、忘れてたもんを、いっぱい思い出させられる。さっきも、大人ぶって、あんな秘密めかした喫茶店に、あんた連れてったやろ。目いっぱい背伸びして、もろくて、危なっかしくて、でも、一生懸命や。駿さんと、あとどのくらい一緒にいられるか、分かれへん、言うのにな」
「知ってるのか?駿の病気のこと」
「彩夏に頼まれて、駿さんが通うてる病院に調べに行ったんは、うちやった」
 美咲は唇を噛み締め、ハンドルを握りなおす。
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