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2004.09.01

小説・残光(仮)第二十二回

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 駿はさらに冷徹に言葉を継いで行く。
「詩織が行方をくらましたとき、健二、君はロマンチックな推測を言っていたな。南方の戦地で行方不明になった楠本教授と、詩織はなんらかの関係があったんじゃないかとか・・・年齢的には教授の孫娘あたりか・・・そうやって幻想を紡ぐことで、君は詩織を免罪し、永遠に自分のものにしていたのかな」
 親友の顔を、健二は仇を見つめるように睨み付ける。しかし駿はたじろがない。
「君はそうやって京都に残った。この街は不思議なところで、思い出だけとでも生きていける。けれど、僕と真那は、卒業して東京に行き、やがて結婚した。君も祝福してくれたね。でもすぐに僕は気がついたんだ。真那は、東京で生活はしているけれど、心は京都と君に向かっているって。そうさ、真那はずっと君が好きだった。今もそうさ」
 駿は微笑んだ。表情が崩れると、その顔には衰弱した色が濃くなる。
「真那は思い出の君が好きなんじゃない。常に現実の君を求めている。僕は、自分に素直になることで、真那の気持ちもわかったのさ。そして、こういう行動に出た。僕は詩織の娘と暮らし、真奈を君の元へ送ろうってね」
 健二は、大きく息を吸い、唇を噛み、何度も頭を振り、自分を落ち着かせようとしている。
「二年前に仕事を辞めて、詩織の行方を捜し始めたって、そう言ってたな?」
ようやく吐き出した健二の言葉に、駿は頷く。「そのとおりだ」
「なにがあったんだ?二年前に?」
健二の問いかけに、駿はふん、と鼻を鳴らして笑った。
「僕のことを、みっともないと思ってるだろう?年甲斐もなく若い娘に血迷ってるって。それはわかってるさ」
駿は背中を反らし、大きく伸びをしながら顔をしかめた。
「僕は、日本の淡水魚が好きでね。よく水族館に見に行く。地味な魚が多いんだが、婚姻色といって、繁殖を迎えた個体は、素晴らしく艶やかになるんだ。人間だってそうだ。あの頃の僕たち・・・そうさ、詩織といた君や僕は、きっと人生で一番輝いていたに違いないんだ・・・その輝きの残光を、僕も味わってはいけないのか?」
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コメント

詩織という女性、輝きたい自分、取り戻したいあの頃。もう戻れないあの頃に人はなぜ思いを馳せるのか?そういったことへの龍3様の回答が小説に込められていくのでしょうか。この先の展開が楽しみです。

ちょっと前にあった女性の写真。あれはどなたですか?詩織さんに実在のモデルが居た?

投稿: miyamo | 2004.09.01 02:29

miyamoさん、コメントおおきに!
ほんまは20回くらいで書き上げてしまうつもりでしたが、もうちょっと続きそうです。「あの頃」のことを書いてしまわないとね・・・よろしくお願いします。

「ちょっと前の女性の写真」は、miyamoさんも当然ご存知の人なんですが、気付かれなかったとは、うまく細工が出来たなとほくそえんでおります。詩織にモデルがいたかどうかは・・・秘密です(^^)

投稿: 龍3 | 2004.09.02 00:48

あの写真の女性はやはり、世界を股にかけ三面六臂のご活躍のあのお方ですよね。

投稿: Bach | 2004.09.08 04:00

Bachさん、コメントおおきに!
三面六臂の興福寺の阿修羅像は美しく凛々しく、昔からファンです・・・って、韜晦に走るわし(笑)
なにせあの写真は、いくつもフィルターかけてぼやかした挙句、左右逆転させ、わしのデジカメ写真と合成し、髪型その他も手を加えるという苦心の作品です(爆)

投稿: 龍3 | 2004.09.08 22:52

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