« 小説・残光(仮)第十七回 | トップページ | 小説・残光(仮)第十九回 »

2004.08.21

小説・残光(仮)第十八回

----------
 真那が憤然とテーブルを叩いた。
「なんなのそれ!最低だわ。詩織は・・・裏切ったのよ、私たちみんなを!それを、ずっと追いかけていた?」
 軽蔑の視線を投げる真那に、駿は昂然と背中を反らす。
「ああ、僕は自分の気持ちに正直になることにしたんだ。詩織が好きだった。悔いを残したくないと思った。君を裏切ることになっても、僕は詩織をもう一度つかまえようと思った」
「それで、詩織そっくりの若い女の子をつかまえたわけ?いい気なことね」
 唇を噛んで、健二が割って入る。
「待てよ、はっきりさせてくれ。彩夏という子は、何者なんだ?詩織と関係は、あるのか?」
「順序良く話そうと思っているのに、真那が邪魔するからさ」
澄ましてまた、アイスティーに口をつける駿に、真那は悔しそうに言葉をぶつける。
「いつからなのよ?私に黙って、こっそり詩織の探索なんて始めたのは?」
「仕事を辞めた時からさ」
さりげなく言った駿の言葉に、真那は沈黙した。
「なにせ、もう時間が経ちすぎてて、手がかりをつかむのにえらく苦労したよ。でも、糸は見つかった。たぐると、神戸に行きついた。詩織は、神戸で結婚し、家庭を持っていたよ・・・」
駿は、眼鏡の奥で目を伏せ、静かに語り続ける。
「夫はサラリーマンで、娘が一人生まれていた。詩織は専業主婦だったらしい。目立たない、静かな暮らしぶりだったみたいだな」
「だった、だったって・・・全部過去形なのね」
真那が顔を曇らせる。健二の顔色も変わった。
「ああ・・・詩織の家は、阪神淡路大震災で、燃えたんだよ。消えてしまったのさ。詩織はもう、いないんだ」
深い嘆息と共に呟かれた駿の言葉に、健二は茫然としていた。
----------

|

« 小説・残光(仮)第十七回 | トップページ | 小説・残光(仮)第十九回 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/20826/1239628

この記事へのトラックバック一覧です: 小説・残光(仮)第十八回:

« 小説・残光(仮)第十七回 | トップページ | 小説・残光(仮)第十九回 »