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2004.08.20

小説・残光(仮)第十七回

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 狭い間口に比べてやたらと奥行きの長い、いわゆる「鰻の寝床」のような店で、いくつもの独立した個室の土間にテーブルが置かれていた。酒を飲まない駿はアイスティーを注文し、健二と真那はビールを頼んだ。
 飲み物が運ばれてきてから、駿が口火を切る。
「きっと、二人で来ると思っていたんだ。君たちは・・・似合いの二人だよ」
「なにを言い出すんだ?そんなことより、お前が一緒に暮らしてる女の子は・・・」
息せき切って話し出したが、健二の言葉は淀む。すかさず駿が笑いを見せた。
「彩夏っていうんだ。もうすぐ十八歳になる」
「どういう子なの?どうして、あんなに・・・詩織そっくりなの?」
恐れの色を目に浮かべて、真那が訊ねた。駿はアイスティーを口に運び、視線を遠くに向ける。
「君たちもやっぱり、詩織に似ていると思うんだね。僕もあの子を最初に見たときは、目を疑ったんだ。僕らの前から消えてしまったときのままで、詩織が時間を飛び越えてやってきたのかと震えたよ」
健二と真那は、固唾を呑んで次の言葉を待つ。焦らすように駿はまた、笑顔を見せる。
「もちろん、彩夏は詩織じゃない。でも、僕らが会ったときの詩織も、十七歳だったんだよ、覚えているか?」
「そうよ・・・誰も彼女がまだそんな歳だなんて思わなかった。年齢も戸籍も、嘘を言ってあの学生アパートにいたんだもの」
真那は、恨むように唇を噛む。
「詩織という名前さえ、本名だったかどうか、わからないんだ」
健二も重い口を開いた。駿がそんな健二に挑発的な視線を浴びせる。
「君は、何もかもあやふやなままにして、詩織を美しい偶像として守り続けているんだろう。詩織に愛されたことを宝物にして、詩織が愛したこの京都で」
「何が言いたいんだ?」
いぶかる健二に、駿は勝ち誇ったように唇を曲げる。
「僕は、詩織を追ったんだよ。彼女の足跡を猟犬みたいに嗅ぎまわり、本当の姿を知り、居場所に近づいていったのさ」
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