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2004.08.07

小説・残光(仮)第十五回

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 健二は駆けた。真那も、下駄を鳴らして必死に付いてくる。路地に踏み込むと、ほとんど軒を接するような狭い道は袋小路になっていて、両側には長屋じみた小さな二階屋が並ぶ。その一番奥の一軒の格子戸が、軽い音を立てて閉まった。健二は胸の動悸を抑えながら歩み寄り、表札を探す。暗くてなかなかわからなかったが、やがて、名刺大の紙片に、「奥宮」とサインペンで書いて、格子戸の枠に押しピンで刺してあるのを見つけた。
 立ち尽くす健二の脳裏に、詩織の面影が溢れるように蘇っていた。
(初めて彼女に会ったとき、俺は、弥勒菩薩や聖母マリアを連想した。華やかなところはなかったけれど、清らかで透き通るような面差しだった)
 詩織の写真は、ほとんど残っていない。あの時から何年もあとになって、街角に張ってあった語学講座のポスターに、彼女にとても似たマリア像の写真があった。数日経ち、雨風に打たれて路上に落ちていたそのポスターを、健二は拾って帰り、部屋の壁に貼っている・・・
 下駄の音を殺しながら、真那がやってきた。その張り詰めた表情を見て、健二はとっさに言った。
「真那は・・・さっきの祠の前で待っていてくれないか?俺が、駿を連れ出す。とりあえずは、三人で話した方がいいと思う」
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