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2004.08.04

小説・残光(仮)第十四回

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 車を降りた大通りから、裏小路に踏み入り、葉書の住所を目当てに歩く。どうしても真那の足取りは重く、遅れがちになる。見兼ねて健二は言った。
「真那は、その辺の喫茶店にでも入って待ってた方がいい。俺が見つけて駿を引っ張ってくるから」
「でも・・・」
言いよどむ真那は、ふとまなざしを上げた。その視線の先に小さな祠があり、明かりが灯っている。周りには木々が繁り、住宅地の真ん中でありながら、不思議な深山のような雰囲気があった。
 そして、その祠の前を、一組の男女が通りかかる。やや背の低い、がっちりした体躯の男に、すらりとした少女が寄り添って、腕をからめている。その二人の顔を見た真那の目が、大きく開かれた。同時に健二も我が目を疑っていた。
 ポロシャツを着て、白皙の顔に黒ふちの眼鏡を掛けた男は、塩澤駿に間違いない。そしてその傍らにいる少女は・・・
「そんな馬鹿な!詩織が、あの頃のままの詩織が!」
健二は驚愕に絶句し、真那は眩暈を起こしたようによろめいて、街路樹にすがりつく。祠の神燈に横顔を浮かび上がらせた少女は、健二たちに気付かず、駿の腕を引っ張って、横丁に姿を消した。
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