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2004.08.28

小説・残光(仮)第二十回

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 健二も、駿の横に腰を下ろす。しかし、様々な感情がせめぎあって、言葉が出ない。それを知ってか知らずか、駿は眼鏡に月光を映しながら、静かに話し始める。
「僕も君も、詩織に惹かれていたね。寡黙だけれど、頭がよくて、どこか謎めいた雰囲気があった。わざと目立たないようにしているんだけれど、時々、はっとするくらい美しい表情をする。真那と同じ女子学生専門のアパートにいた。家主には、聖園女子大の二回生だって、学生証を見せていた。あのアパートに、聖園の子はいなかったな。真那も景子も違う学校だったし、誰も偽造学生証だなんて気がつくはずがない。どうして、そんなことをしていたか、わかるか?」
 健二は、うめくように答えた。
「それだけは、詩織が教えてくれたよ。養われていた家から逃げ出して、ひとりで生活したかったんだと」
「うん、そうだ。そして詩織の家というのは、神戸にあったんだ。僕も君も京都の人間じゃないからわからなかったんだが、彼女の言葉は、神戸なまりがあったそうだよ。で、その家というのは、詩織の叔父の貿易商だった。彼女の両親は交通事故で亡くなって、叔父夫婦に世話になっていたんだ。ところが、高校二年の春に、彼女は家出をして京都に来た。」
「どうやって、お前、それを知ったんだ?」
健二が、憎しみに近いまなざしで駿を見る。駿は顔色を変えない。
「アパートを借りるには、学生証だけじゃ足りない。保証人が要る。家主の竜生のおばさん、まだその頃の書類を持っていてね。その保証人のところへ行ってみてわかったのさ。詩織は保証人を金で買ったんだ。そういう商売がどの街にもある。偽造身分証、保証人、大金はいるが、買うことが出来るのさ」
「でもそんな金、詩織はどうやって・・・」
 健二が尋ねると、駿の顔に苦悩の表情が表れた。
「詩織は、バイトばっかりしてると言ってたよな。夜も忙しそうだった。僕たちは、せいぜい居酒屋あたりのバイトだろうと思っていた。大違いさ。詩織は、ホステスやってた。あの頃の僕たちが到底飲みに行けない高級な店でね。学生証や保証人の代金として、働かされていたんだよ」
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