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2004.07.27

小説・残光(仮)第九回

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 健二は葉書のおもての方を見た。驚いたことに、差出人の住所が堂々と記してあった。
「・・・こりゃ、大胆だな」
「来るなら来いって、言ってるのよ。挑戦状だね」
 酒を飲み干すと、真那はカウンターに手を突いて立ち上がる。

 錦小路はひと気が失せて、石畳に撒かれた水が光っているばかりだ。かなり長身の真那は、下駄を履くと肩が健二と同じ高さに並ぶ。酔いの気配も見せず、しっかりした足取りである。
「歩いていくには、ちょっと遠すぎるな、タクシーを」
「ちょっと待って。もう少し錦小路を、歩いていかない?」
 真那は低い声で言う。横顔が緊張している。駿に会うのを、まだ先延ばしにしたい気持ちがあるようだと、健二は察した。
「浴衣姿なんて、初めて見るけど、馬子にも衣装だな」
「失礼しちゃうな。まあ、学生時代はジーンズばっかりだったしね。宵山だって、そんな格好で来てたし」
 祭礼の提灯の掲げられた下を、ゆっくりと歩く。鮮魚店の軒下から、黒猫が走って通りを横切った。
「よく歩いたよな、あの頃はみんなで。オールナイトの映画見て、下宿までとかさ」
「祇園から、金閣の近くまで歩きとおしたこともあったよね。無茶苦茶やってたんだなあ」
真那が懐かしそうに微笑む。
 健二も思い出す。自分と駿が同じ大学の三回生で、真那が女子短大の一回生だった。そしてあの少女は、真那の下宿に一緒にいた。それから・・・
「竜生や景子は、元気にしてるのかな」
「年賀状は来るもんね・・・」
「確かにな。でも、ほんとに元気かどうか・・・駿だって年賀状じゃ、仕事辞めたなんて一言も書いてなかったじゃないか」
 駿の名前を出すと、真那の顔から笑みが消える。
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コメント

学生時代に馬鹿やっていたことを大人になって振り返ることができる友がいるっていうこと。それ自体がかけがえのないもの。酔って話すうちに、あんなことがあったとか、これ覚えてる?なんて話す。そうして盛り上がれば盛り上がるほど、別れた後に残る寂しさ・・・。

そんな学生時代と現在の架け橋みたいな瞬間が今回感じられて良かったです。

所でタイトル、(仮)なのはなんでですか?

投稿: miyamo | 2004.07.28 20:15

miyamoさん、コメントおおきに!
タイトルに(仮)が付いているのは、まだ確定していないからです。わし、題名付けるの苦手で下手なんです(^^;)
物語は、まさに学生時代と現在の架け橋を形作って展開していく・・・はずです。行き当たりばったりなんですが。

投稿: 龍3 | 2004.07.29 11:11

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