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2004.07.26

小説・残光(仮)第八回

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 祇園祭の季節、どの店に行っても鱧(はも)は付き物である。豊潤に脂の乗った白い身を噛み締めながら、健二と真那は冷えた日本酒を酌み交わす。
「真那は、昔から飲んでも全然顔に出ないんだよな。駿とは正反対だ」
「彼はすぐ真っ赤になって寝ちゃうからね。飲み歩くのは私ばかり」
「真面目で堅物のあいつが、何で家を出たりしたんだ?」
健二が問いかけると、真那は、切子ガラスのぐいのみをあおった。
「そうよ、真面目で、堅物で、気が小さくて、でもね、ものすごく頑固でプライドが高いの。とても潔癖でね。そんな彼が・・・若い女の子と京都で同棲するために、家出したのよ。信じられる?」
一気に言い切った真那の言葉に、健二は目を丸くする。
「なんだ、そりゃ・・・誰かが見たのか?京都で、あいつを?」
「こんな、ふざけたモノを送ってきたのよ・・・」
真那は、バッグの中から一枚の葉書を取り出して、カウンターに置いた。
 くじ付きの暑中見舞いである。絵柄は祇園祭の鉾が印刷されている。ボールペンで書かれた子供じみた丸っこい字で、こう綴ってあった。
「塩澤真那様
 突然のお便りで申し訳ありません
 駿さんは、京都で私と暮らしています
 ご心配なさってると思って、お知らせします
 でも もう東京に 駿さんは帰りません 
 ずっと私といてくれます
 ごめんなさい 
                     奥宮彩夏」
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