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2004.07.22

小説・残光(仮)第六回

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 火の鳥の足元には水時計があり、水琴窟の音色が響いてくる。
「糺の森に・・・行きたいな・・・」
真那がそう呟いた。
「宿はもう決めてあるのか?」
「うん。小西のおばあちゃんの民宿。でもその前に、糺の森へ」
 そう言って歩き始めた真那に並んで地上に出た健二は、タクシー乗り場へ向かう。

 原初の京都の森の名残りだという糺の森は、下鴨神社の参道を挟んで濃い緑陰を作っている。
 森の中を流れる清流を眺めて、真那は微笑する。
「ここも、時間が止まってるね。昔と、何も変わらない・・・」
「そうでもないさ。この川・・・泉川とか、瀬見の小川とか、奈良の小川とか、古典に歌われた小川を、昔どおりに復元しようとしたりして、あの頃とは微妙に違うんだぜ」
「健二は、でもあの頃に呪縛されてる・・・だから京都にいるんでしょ?」
微笑を向けてきた真那に、健二は絶句した。真那は微笑したまま、視線を水面に落とした。
「どうして、あなたも駿も、そんなにあの頃にこだわるのかなあ・・・」
「駿は・・・どうしてる?」
気になっていたことを、健二は小さな声で口にした。真那は表情を変えずに答えた。
「一ヶ月前に、わたしに黙って家を出たの。それで、一昨日、京都にいるってわかったの」
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