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2004.07.21

小説・残光(仮)第五回

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 思案しながら、携帯電話をもてあそんでいた健二は、ふと、視線を落とす。上に伸びる構造が視線を奪いがちな京都駅だが、もちろん地下もあった。健二から携帯電話を受けないつもりであれば、電波の届かないところへ行くのも手である。
 伊勢丹デパートの地下には、土産物売り場が並び、明るい賑わいが続いていた。けれど、そこから離れ、東側との通路をたどると、コインロッカーが並ぶほかは何もなく、黒い艶やかな壁がひんやりとした空気を湛えている。地上の暑さと喧騒から遠ざかり、どこか墓地の落ち着きさえ思わせるその地下に・・・彼女の姿はあった。
 さらさらした長い髪を、ポニーテイルにくくり、白いノースリーブのワンピースを着て、素足に茶色い革のサンダルを履いた塩澤真那は、健二の靴音にも振り返らず、じっと、通路の隅にある、祭壇のようなモニュメントに見入っている。
「こんなものが出来たのね・・・手塚治虫の火の鳥」
「ああ、駅ビルの東ゾーンに、KYOTO手塚治虫ワールドっていうのがあるから、その関連だろ」
「不死の鳥・・・神様の一種みたいね」
そう呟いて、真那は、掌を合わせて拝むようなそぶりをした。驚く健二に、顔を上げた真那は舌を出してみせる。そんなしぐさは、少女の頃とまるで変わらないが、彼女の顔にはやつれた色が浮かんでいた。
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