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2004.07.19

小説・残光(仮)第三回

7.6 001.JPE

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 京都駅に着き、改札口に急ぐ健二のポケットで、携帯電話の着信音が鳴った。パッヘルベルのカノン・・・
 携帯電話を耳に当て、「もしもし」と話しかける健二に、少しかすれた女性の声が返ってくる。
「健二?今、どこにいるの?」
「ごめん、遅れた。やっと駅に着いたところだ。改札に行けばいいかな?」
「ちょっと待ちくたびれたよ。だから、罰よ」
 笑いを含んだ彼女の声が、健二の足を止めさせる。
「わたしがどこにいるか、教えてあげない。探しなさい」
「おい、この暑いのに、勘弁しろよ!」
 華やかな笑い声を残して、電話は切れた。舌打ちして健二は携帯電話を閉じ、行き交う人の群れに茫然と目を向ける。修学旅行の学生たちの制服が、白い渦となって健二を取り巻く。新幹線の発着に近い八条口は、特に団体の修学旅行生たちの姿が目に付いた。
(こっちには、彼女はおそらくいないだろうな)
健二は、直感的にそう思った。連絡通路に足を踏み入れて、駅の正面である、北側へ向かう。巨大な吹き抜け空間を持つ駅ビルがそこにある。
 知人と何度か待ち合わせに使った、室町小路広場で、健二は辺りを見回した。赤いモニュメントが目に沁みた。
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