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2004.07.16

小説・残光(仮)第二回

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 この石段で、あの少女と待ち合わせた日々は遠い記憶である。けれどもまだそれは、今の健二の胸に鋭い痛みをもたらす景色だ。
 (最後に約束した、祇園祭の宵山に、彼女は来なかった。おれは、虚しく石段の上で待ち続けた)
 陽射しは今、石段を灼いて、乾いた風が、楼門の周りにそびえるクスノキの葉を揺らす。
 (あの日は、待っているうちに激しい夕立が襲ってきたんだ)
 祇園祭のクライマックス、宵山から山鉾巡行の頃、よく雷を伴う豪雨があって、大概そのあとに、京都の梅雨は明ける。今日あたり・・・その雷雨が来るかもしれない・・・と、健二は空を見上げた。
 正午近くの祇園の空は晴れ渡り、西に続く四条通には、陽炎が揺れている。
 腕時計に目を落とし、健二は約束の時間が近いことに気付くと、手を挙げてタクシーを拾った。
「京都駅・・・八条口へ」
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